第4章 放射線の利用
§4 ラジオアイソトープの生産および輸入等

1.ラジオアイソトープの生産

 原研は,国内の需要に応じることを目標として,JRR-1の運転開始とともにラジオアイソトープ製造の研究を開始し,35年秋から試験製造を行なってきた。
 38年度における原研の精製ラジオアイソトープ生産販売実績は,(第4-3表)に示すとおりであり,24Na,42K等8核種が生産された。
 このように,38年度に生産販売された精製ラジオアイソトープはいずれも比較的短寿命の核種で,その数および生産量はともに少ない。しかし,39年度には,JRR-2の定常運転が予定されているので,ラジオアイソトープの生産は一段と増強される。また,精製ラジオアイソトープを本格的に生産するため,ラジオアイソトープ製造工場(約3000平方メートル)を建設中である。建屋は38年度に完成し,内装は一部39年以降にもち越されている。
 この完成によって,精製ラジオアイソトープの生産は,いっそう増大する予定である。

 製造研究について原研は,38年度にはホットアトム効果によるラジオアイソトープ製造研究等各種ラジオアイソトープの製造研究を行なったが,その成果の一つとして直線加速装置により57COが定常的に得られる見とおしを得た。

2.ラジオアイソトープの輸入

 現在までのところ,逐年増大するわが国のラジオアイソトープの需要は,ほとんど輸入でまかなわれている。主要核種別輸入ラジオアイソトープの推移は,(第4-4表)に示すとおりである。
 輸入量は,38年度には前年度にくらべて,小線源核種については研究,医療等に使用される131Iが急増しており,大線源の60Coについては,原研高崎研究所の照射器用の大口需用があったので飛躍的に増加した。

3.放射性標識化合物

 32P, 131I, 198Au等のラジオアイソトープを用いて製造される放射性標識化合物は,試薬,医薬品,肥料等として各分野に利用され,その需要は年ごとに増加している。38年度の放射性標識化合物頒布実績は(第4-5表)に示すとおりであり,民間企業数社の本格的生産が開始されたこともあって総数量は前年度にくらべて約3倍に増加した。これら放射性標識化合物は,一部輸入されたほか大部分が国産された。


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