第4章 放射線の利用
§2 医学利用

 37年度のラジオアイソトープ工業利用実態調査にひきつづき,38年度には11月1日現在におけるラジオアイソトープ医学利用実態調査*を実施した。
 これによると,ラジオアイソトープを利用している病院数は,全対象病院数の14.4%である。経営主体別の普及率をみると,(第4-1表)に示すとおりで,普及率の高いのは国立および日本赤十字社の病院である。
 地域別の分布は(第4-2表)のとおりで,関東,北陸,中国地域の順に普及率が高い。


調査の対象は医療法人および個人が経営するものを除く全国の病院(患者20人以上の収容施設を有するもの)で,調査の方法は全国の病院を経営主体によって11の暦に分け,おのおの1/3を無作為に抽出し調査した。

 医学の分野では,ラジオアイソトープは,放射線照射装置,放射線照射器具および非密封ラジオアイソトープとして利用されている。そして60Co,137Cs等大線源利用による放射線照射装置を所有する病院は,8.1%,アプリケータ,針等小線源利用による放射線照射器具を所有する病院は,11.9%,131I,24Na等のトレーサー利用による非密封ラジオアイソトープを使用している病院は,4%となっている。
 放射線照射装置の線源用核種としては,半減期の長いガンマ線放射体の60Coまたは,137CSが利用されている。これらは主として各種悪性腫瘍の治療に用いられている。装置1台当りの平均核種量は60Coの場合は約650キュリー137Csの場合は約2000キュリーとなっている。

 放射線照射器具には,針,カプセル,ペレット,アプリケータ等いろいろあり,悪性腫瘍および血腫などの治療に使用されている。針には数ミリキュリーの226Raおよび60Coが利用されている。カプセルには226Raおよび60Coが,ペレットには226Raが利用されているが線源核種量はいずれも数十ミリキュリーであり,針の場合にくらべて1桁ほど大きい,アプリケータには数十ミリキュリー程度の90Srが利用されている。

 臓器機能診断用トレーサーまたは治療用医薬品として非密封状態で使用される核種としては,  32P, 131I,198Auなどが主なものである。32Pは主として悪性腫瘍,血腫などの治療に,  131工は甲状腺の機能診断,甲状腺腫瘍などの治療に,198Auは癌性腹膜炎,肋膜炎の治療に利用されている。また,研究段階としてラジオアイソトープのトレーサー利用は臓器の診断,循環血流量の病態生理学的研究,脳腫瘍の診断等各方面にわたっている。


目次へ          第4章 第3節へ