第4章 放射線の利用
§1 工業利用

 工業の分野において,ラジオアイソトープ等の放射線は各方面に利用され,かなりの成果が得られるようになった。
 (第4-1図)に示すとおり,ラジオアイソトープの工業利用は,36年頃一時伸びがゆるやかになったが。最近は再び増加の傾向を示している。これは試験利用によって,ラジオアイソトープの利用が実用化の段階に入りつつあることを示している。現在ラジオアイソトープを利用している事業所を業種別にみると電気機械,鉄鋼,化学の各業種に比較的広く普及している。((第4-2図)参照)

 工業利用においては,ゲージングの利用が圧倒的に多く,各種製造工程に利用され,トレーサーと放射線化学は,各種工程解析や研究用に利用されている。

 39年3月30日,60Co中間規模試験室等の完成を機に開所された原研高崎研究所は,約26万平方メートルの敷地に放射線化学の中間規模試験,放射線工学および線源の開発を行なうとともに,大施設で行なうのに適当な基礎研究を実施する目的で設置されたものである。主な施設としては合計30万キュリー (当初10万キュリー)の60Coおよび連続使用可能の200万電子ボルト,10キロワットの大出力共振変圧器型加速器の照射施設ならびにこれに付属する中間規模試験室およびラジオアイソトープ工学試験室がある。39年度には,これらを用いて繊維のグラフト重合,エチレンの高重合等の試験研究が行なわれる予定である。
 なお,国立試験研究機関等において,各種重合反応,繊維の染色加工技術改善等の研究が行なわれている。


目次へ          第4章 第2節へ