第3章 核燃料・材料および機器等
§2 材料

 原子炉材料の開発については,腐食試験,照射試験等が原研,国立試験研究機関において行なわれ,また,それら材料の生産技術や品質向上のための研究が民間企業において行なわれている。これら民間企業の研究開発に対しては,原子力平和利用研究委託費または研究費補助金による助成が行なわれている。

(1)減速材,反射材および冷却材

 減速材および反射材に使用する高純度,高密度の黒鉛は,主として民間企業において開発され,その製造技術は一応確立されている。重水も民間企業において,一応,高純度のものができるまでにいたっている。

(2)被覆材

 軽水型動力炉に使用するオーステナイト系ステンレス鋼被覆管は,おおむね要求される寸法精度のものが生産できるまでにいたっている。
 ステンレス鋼の応力腐食については,37年度にひきつづき,腐食とその影響因子の関連性を解明するために,基礎的な研究が各機関で行なわれている。
 ジルコニウム合金について,現在民間企業が,その品質向上のための製管法の改良研究を行なっている。
 ジルコニウム合金の水素吸収に関する研究が,37年度から民間企業,原研,燃料公社,科学技術庁金属材料技術研究所,大学等の共同研究の形で行なわれ,38年度に一応の結論を得た。しかし,腐食については,なお種々不明の要因があって,現在も各機関でさらに研究がつづけられている。
 炭酸ガス冷却型動力炉用のマグノックス被覆管は,原研と民間企業の共同研究によって,製造法および照射試験に関する研究が行なわれており,その高温疲労,中性子照射効果等についての試験および製造法の改善の研究が行なわれている。
 マグノックスの腐食の研究については,金属材料技術研究所において高温ガス雰囲気中での腐食に関する研究が37年度にひきつづき行なわれている。また,原研においてはマグノックスの純水中での腐食試験が38年度から行なわれている。
 研究用原子炉や臨界実験装置に使用されるアルミニウム被覆管の製造技術はすでに確立されており,38年度には民間企業において,国産1号炉の2次装荷燃料用被覆管の製造が行なわれた。
 ベリリウムについては,金属材料技術研究所において,成型加工と機械的性質に関する研究が行なわれている。38年度には,電子ビームおよびアークによるベリリウムの溶解の研究と,押出し材の靱性や金属集合組織および熱処理による影響について研究が行なわれている。原研においても,民間企業との共同研究により,金属ベリリウム管の内圧破壊試験を行なっている。
 各種被覆材の溶接に関しては,金属材料技術研究所,民間企業等でそれぞれ,電子ビーム溶接,アーク溶接等について研究がすすめられている。

(3)制御材

 制御材としては,ボロン鋼,ボロン入りステンレス鋼,ハフニウム,カドミウム合金等の開発が民間企業で行なわれた。またボロン入りステンレス鋼の高温水中での腐食に関する研究が金属材料技術研究所で行なわれている。

(4)構造材

 原子炉圧力容器用鋼の中性子照射の影響に関して,社団法人日本鉄鋼協会で炉内照射による衝撃遷移温度や引張強度の機械的性質の温度による変化についての基礎的な試験研究が行なわれている。
 また,原子炉圧力容器用鋼の溶接部の非破壊検査判定基準を求めるため社団法人日本溶接協会において,37年度に行なわれた欠陥検出の研究結果にもとづき,非破壊検査像とその溶接部の機械的強度との関連性についての研究が行なわれている。


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