第3章 核燃料・材料および機器等
§1 核燃料

4.加工

 国産1号炉の2次燃料は燃料公社が生産した金属ウランを民間企業が加工し,38年度に原研に納入した。これは,わが国における最大の加工量で各社にとって貴重な経験となった。 一方,日本原子力発電株式会社は同社の東海発電所の燃料の10年間分を英国から購入する契約を38年7月に締結した。
 金属ウランの鋳造に関する試験については,民間各社の要望もあり,燃料公社はこれまでのものより細い直径2〜3インチのビレットの製造に着手し,良好なものが得られるようになった。また,中空燃料棒の試作も行なっており,その鋳造法については, 一応の見通しは得られたが,中子引抜きに問題があり,39年度も継続して研究することにしている。
 原研は金属ウラン系燃料の研究として高温で使用する金属燃料のスエリング防止のため,金属ウランへの微量添加元素,とくにモリブデンおよび炭素の影響について研究している。
 U-Mo系燃料の研究としてモリブデンの添加量や焼戻しの熱サイクルに及ぼす影響を研究している。
 U-C系燃料の研究として,炭素量が結晶成長に及ぼす影響とその加工性について検討するとともに,38年度末にはJRR-2を用いて照射し,電子顕微鏡による組織の研究などを行なっている。
 また,酸化ウラン系燃料は,軽水型動力炉の代表的な燃料としてすでにその製造技術は,わが国でほぼ確立されつつあるが,より高出力,より長寿命の燃料を開発するための研究が進められている。
 38年度における民間企業での各種方法による照射用酸化ウラン燃料棒の製造は,これに使用する濃縮ウランの入手が,日米間の特殊核物質に関する新賃貸借細目協定の締結交渉が長びいているため39年度になった。しかし,関係各社は,これに先立ち天然ウランによる燃料棒を作成し,最適条件を得る検討を行ない,燃料国産化への準備を進めた。
 照射した燃料の照射後試験を行なう原研のホットラボラトリーは36年度に一応完成したが,さらに,JRR-3,JPDRおよび東海発電所からの照謝燃料についてのモニタリングを行なうため,38年度には増設に着工した。
 燃料の検査については,37年度以来燃料公社,原研および民間企業が協力して燃料公社内に検査専門委員会を設け,検査試験方法の調整をはかり,標準作業法を定めるための共同実験を行ない,標準試験法を確立した。
38年度には,燃料体の検査試験対象別に目的研究を行ない,総合的な検査技術の確立に努めた。すなわち,37年度にひきつづいて,端栓溶接部へのヘリウムリーク試験法,エックス線透過試験法を検討し,標準作業法を確立した。
 また,燃料被覆管の超音波探傷法および渦電流探傷法の適用を研究し,あわせて被覆管寸法精度の測定にエアーマイクロメーターを利用する方法を検討した。
 コバルト60のガンマ線源を用いる金属ウランの透過試験は,37年度東海製錬所にガンマ線探傷室を建設し,ここで透過試験法における基本的要因を解析した。
 以上のほか,燃料の表面汚染度測定法,板状型燃料のエックス線螢光板透視法などの新しい技術の開発研究もすすめられている。
 一方,核燃料物質の使用事業所数は年々増加し,(第3-2表)に示すとおり38年度末で63件となった。

 核燃料物質使用の最近の傾向としては,低濃縮ウランを用いて燃料体を製造する事業所が増加しつつある。
 また,38年度中に核燃料物質の使用の主なものは国産1号炉の2次燃料をはじめとして,三菱電機研究炉用燃料,日本原子力事業臨界実験装置用燃料である。
 なお,これらとは別に東海発電所の燃料取扱機器などの作動試験のため,劣化ウラン製模擬燃料を英国から輸入した。


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