第2章 原子炉の開発
§5 高速増殖炉

 原子力委員会は,高速増殖炉開発の重要性を十分に認識し,国内外における研究開発の状況について調査をすすめてきたが,研究開発の基本方針あるいは具体的な計画を検討するに先立って,考え方をまとめるため,39年2月から高速増殖炉に関する懇談会を開催し,学識経験者の意見を求めている。
 これと並行して,原研は,高速増殖炉の炉物理的研究を行なうことを目的とした臨界実験装置の詳細設計をすすめ,39年3月その建設について民間企業と契約を行なった。この臨界実験装置は,水平二分割格子型で,3000リットル円筒状炉心を持ち,大型炉心の炉物理的研究も行なえるように設計されている。
 基礎的研究としては,原研において従来,高速炉心の核計算,高速炉ブテンケットの炉物理的研究,核定数の測定等が行なわれてきた。38年度は,臨界実験装置による研究の予備実験として,200万電子ボルトのファンデグラーフ型加速器を用いた天然ウラン体系についての拡散実験,高速中性子測定法の研究等を行なっている。
 一方,高速増殖炉の冷却材として用いられるナトリウムに関する研究については,36年度以来原研と民間企業とが共同して行なってきた小型ナトリウム強制循環ループによる試験が,一応完了し,現在その結果について検診がすすめられている。
 また,原研は,熱除去能力1000キロワットのナトリウムループの設計研究を行なうとともに,ナトリウムループ用バルブの試作およびナトリウム中の酸素等の分析法に関する研究を民間企業に委託するなど,ナトリウムに関する調査,研究を進めている。


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