第2章 原子炉の開発
§4 材料試験炉

 核燃料,原子炉材料等を国産化し,また,新型原子炉を開発するために,材料試験炉が必要である。
 原子力委員会は,35年8月材料試験炉専門部会を設置し,材料試験炉をわが国に設置するうえに必要な基本的事項を検討させた。同専門部会は,37年4月,熱出力5万キロワット規模の材料試験炉を早急に原研に設置する必要がある旨の報告を行なった。
 原研は,この報告の趣旨にそって,材料試験炉の概念設計およびこれにもとづく仕様書の作成に着手し,38年8月その原案をほぼ完成した。
 原子力委員会は,同年8月材料試験炉(JMTR)を設置することとし,大要次のとおり決定した。
① 本試験炉は原研において建設する。
② 本試験炉は43年度完成を目途として39年度から建設に着手する。
③ 本試験炉の規模は熱出力5万キロワットとし,炉心内中性子束は1014n/cm2/sec以上とする。
④ 照射試験用ループは6本とするが,差し当り3本を設置することとし,残りの3本の設置の時期については,その後の照射需要を勘案して決定する。
⑤ 照射後試験用ホットラボラトリーについては,既存のものをできるだけ活用することを考慮する。
⑥ 本試験炉の設置場所は茨城県大洗地区を予定する。
 原研は,材料試験炉仕様書原案の検討を米国ニュークレアユーティリティサービス社に依頼し,その結果を取り入れて,39年2月最終的な材料試験炉の仕様書を完成した。本仕様書は基本的な設計条件および設計注意事項を示したものであるが,基本的な設計条件の主なものは,次のとおりである。
 型   式  濃縮ウラン軽水タンク型
 熱 出 力  5万キロワット
 燃   料  平板状Al-U合金(ETR改良型)
 燃料装荷量  235U  8キログラム以下
 中性子束(最高)  熱中性子  3×1014 n/cm2/sec
            速中性子   2×1014 n/cm2/sec
 ループ用実験孔   6本
なお,民間企業にたいする発注は,39年度中に行なわれる予定である。


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