第1章 総論
§2 わが国の原子力開発の概況

5.研究開発の体制

 機構および予算  わが国の原子力開発の体制は,過去10年間にわたり順次整備され,各機関の内容も充実してきた。38年度においては,わが国原子力第1船の建造を行なうことを目的として,8月に日本原子力船開発事業団が設立された。
 また,茨城県東海地区には,各種の原子力関係施設が集中的に設置されつつあるので,この地区における放射線監視を充実し,原子炉施設等の安全対策を強化するため,科学技術庁の地方支分部局として水戸原子力事務所が38年10月に発足した。
 39年度原子力関係予算は総額においてはじめて100億円台となり,38年度に比し約14億円増の108億円余りとなった。
 予算の詳細については,付録III-1表に示すとおりである。

原子力委員会専門部会の動き
37年度にひきつづき,原子炉安全専門審査会および8つの専門部会はそれぞれ活発な活動を行なってきたが,さらにプルトニウム専門部会が38年4月設置された。
 専門部会から提出された報告書は,「放射能調査の方針について」(放射能専門部会),「原子炉立地審査指針について」(原子炉安全基準専門部会)および「国産動力炉開発計画について」(動力炉開発専門部会)がある。その詳細については関係章に述べてある。

日本原子力研究所をめぐる問題
 前述のとおり,動力試験炉(JPDR)の試験的発電直後における運転停止を契機として原研のあり方が問題となり,各方面において種々の立場から議論がなされ,原子力委員会においても原研の改善について検討するところがあった。
 他方,衆議院科学技術振興対策特別委員会においても,原子力政策全般について再検討を加えるため,原子力政策に関する小委員会を設置した。
 小委員会は,原子力委員会および原研に対して,原子力の日本における位置,あるべき原研の姿とその発展像,原研の改革の諸点等6項目についてその見解を求めた。原子力委員会および原研は,39年3月それぞれ報告書を小委員会に提出した。
 両報告書は,現状を,一応の施設整備を終わり研究開発の成果の獲得と活用へと移行する段階であると認識する点においては一致しているが,原研のあり方についての見解は必ずしも一致していない。原子力委員会は,原研がわが国原子力の研究開発の中枢的機関たる使命感に徹し,人心の刷新と士気の向上に努め経営組織とその機能の改善強化を行なうべきであるとするのに対し,原研は,わが国原子力開発体制における原研の役割を明確にし,運営上の自主性を確立し,計画に見合った人員,資金を確保することが必要であるとしている。
 小委員会はこれらの報告書および関係当事者の陳述をもとに原子力委員会の指導力と企画力の強化,原研における開発研究の重視,研究者,技術者に関する体制の確立,労務管理の整備等,8項目の見解にまとめ,39年4月科学技術振興対策特別委員会に報告した。


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