II 原子力委員会の計画および方針

8.国産ウラン鉱の開発方針について

(原子力委員会は37年10月31日国産ウラン鉱の開発方針について次のように決定した。)
1. 天然ウラン燃料に対する需要は,現在年間およそ10トン程度であり,今後も研究用の需要としては大体同程度のものが見込まれるにすぎない。しかしながら,原子力発電等の開発の進展に伴い大幅な需要の拡大をみるものと予想されており,原子力開発利用長期計画の後期においては,年間数百トンに達するものと考えられる。

2. 他方,国内資源による供給については,現在把握されている埋蔵鉱量は,確定および推定鉱量としてウラン量換算1,000t程度にすぎず,上記の如き膨大な需要に応じうる規模には達していない。

3. したがって,今後における原子力開発の進進にあたっては,その燃料供給は,当面国産化の可能性のない濃縮ウラン燃料はもちろん,天然・ウラン動力炉燃料についても海外資源にこれを依存しなければならない状況にある。

4. また,海外ウラン精鉱市場価格はここ数年間に著しい低下を示し,かつ,今後も当分軟調を続けるものと考えられるので,国産ウラン精鉱は,これを開発した場合相当程度の割高を免れないものと予想される。

5. 上記のような情勢に加えて,幸い海外からの供給には量的にもここ数年間問題はないものと考えられるので,国産ウラン鉱の開発については,将来においてウラン資源のより効果的な利用がはかられる時期を目途として,これをおし進めることが適当と考えられる。したがって,当面は,国内資源の発見とその確保に努めることとし,これがため原子燃料公社,地質調査所における探鉱活動の重点を有望な地域の探鉱に指向することとしたい。

6. また,これと並行してわが国の鉱床条件に適合した探鉱製錬方式を確立するため,一貫製錬等必要な技術の開発に努めつつ,これらの探鉱の結果,大規模富鉱帯が発見される等の場合における本格的探鉱製錬の実施に備えることとしたい。なお,当面の試験製錬等によって生産される10トン程度の金属ウランは研究炉用等の需要にあてるよう措置することとしたい。


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