２．昭和37年度核原料物質探鉱計画
(昭和37年度における内閣総理大臣が定める核原料物質の探鉱計画については昭和37年4月4日の原子力委員会において議決され,昭和37年5月11日内閣総理大臣が決定した。探鉱計画の内容は次のとおりである。)
昭和37年度における核原料物質の探鉱については,前年度に引き続き主として堆積岩地域を対象として行なうこととする。
探鉱の実施にあたっては,通商産業省工業技術院地質調査所が,カーボーン,地質鉱床概査等によりウラン鉱賦存の状況について基礎的な調査を行なうとともに,その成果に基づいて原子燃料公社が民間企業の行なう探鉱と調整をとりつつ有望地区に対して地質鉱床精査,試錐探鉱,坑道探鉱等を実施し,効果的に国内ウラン資源の実態を明らかにすることとする。
1. 地質調査所の行なう探鉱地質調査所においては,昭和36年度までにウラン鉱賦存の可能性のある地域のうち約140,000平方キロメートルについて概査を実施したが,本年度は予算30,668千円をもつて引き続き堆積岩地域に対して組織的に概査を行ない,ウラン鉱床の発見につとめるとともに,その地質鉱床学的研究および堆積型鉱床に対する探鉱技術の向上に関する研究を行なうこととする。
(1) 放射能強度分布概査
次の地域面積計12,000平方キロメートルについて,カーボーン調査を行なうほか地質鉱床概査を実施し,放射能強度の分布状況を調査する。
(イ) カーボーン調査
福島県,長野県,愛知県,鹿児島県
(ロ) 地質鉱床概査
北海道紋別郡,青森県,岩手県,宮城県,山形県,新潟県,富山県,鹿児島県
(2) 放射能異常地調査および鉱床調査
昭和36年度までの放射能強度分布概査の結果放射能強度がとくに異常な次の地区に対して地質鉱床概査等を実施して,新鉱床の発見につとめる。
山形県長井市周辺,新潟県新発田市周辺および北蒲原郡中条町付近,京都府奥丹後北部。
さらに,次の地区については,ウラン鉱床の賦存が推定されるので,鉱床の賦存状況の概要を明らかにし,今後の探鉱に関する基礎的資料を得るため地化学探鉱を含む鉱床調査を実施する。
新潟県岩船郡中束南部,鹿児島県肝属郡湯ノ谷。
(3) 探鉱技術の向上に関する研究
人形峠鉱山および東郷鉱山における鉱床は,基盤をなす花崗岩の構造と密接な関連を有することが判明しているので,原子燃料公社と協力して,本年度は東郷鉱山飯盛山地区に対して地震探鉱および電気探鉱を実施して基盤の構造を探知するための手段としてのそれらの適応性について研究する。
2. 原子燃料公社が行なう探鉱
昭和36年度に引き続き,人形峠鉱山および東郷鉱山ならびにそれらの周辺地区に賦存する堆積型ウラン鉱床の探鉱に重点をおき,予算約290,000千円をもって地質鉱床精査,物理探鉱,地化学探鉱等の地表探鉱延約4,380人日試錐探鉱500メートルおよび坑道探鉱約4,900メートルを実施するものとする。
(1) 人形峠鉱山およびその周辺地区
人形峠鉱山においては,中津河地区に対して昭和36年度までに実施した坑道探鉱によって鉱床の賦存状態が明らかになりつつあるが,本年度も引き続き当地区に対して沿層による坑道探鉱を行ない確定鉱量の把握につとめる。また,昭和36年度において発見された長者地区および十二川地区の鉱床は,かなり有望と認められるので,引き続き地表探鉱試錐探鉱等を実施する。一方倉見,黒岩地区については高品位の露頭周辺に浅孔試錐を行なう。
(2) 東郷鉱山およびその周辺地区
東郷鉱山においては,方面,麻畑両地区の坑道探鉱は,昭和36年度をもって大部分終了したので本年度は神倉地区の探鉱を重点的に行なうが,とくに神倉地区南部の鉱床については,坑道探鉱を実施して鉱床の実態を明らかにする。また,その周辺部にあたる鳥取,岡山県境地区については,主として試錐探鉱を実施する。
飯盛山地区は,地質的にウラン鉱床賦存の可能性が大きいので,昭和36年度に引き続き地質調査所と協力して,地震探鉱,電気探鉱等を実施して地質構造の解明につとめ,新鉱床の発見に資する。
このほか,昭和36年度までの地表探鉱等により有望と認められる三徳山,羽衣石,余戸,飯盛山周辺等の各地区に対しては,浅孔試錐に重点をおく探鉱を実施する。
(3) 小国,金丸地区
昭和36年度までの探鉱により,ウラン鉱床賦存の状況が明らかになりつつあるが,いまだ十分な鉱量を把握するに至っていないので,本年度は既知資料に基づき地域を選定し,主として試錐探鉱を実施し有望鉱床の発見につとめる。とくに中束地区については,昭和36年度の調査によりかなり有望と認められたので,本年度は地質調査所と協力して試錐探鉱を実施して鉱量の増加につとめる。
(4) その他の地区
新潟県三川および赤谷地区,京都府宮津地区,島根県石見太田地区,鹿児島県垂水地区,岩手県豊沢地区等については,昭和36年度までの調査の結果さらに探査の必要が認められたので,本年度は地表探鉱等を行ない,必要に応じて試錐探鉱を実施する。
また,地質調査所の行なう調査の結果,有望と認められる地区および原子燃料公社所有鉱区等に対しては,随時地表探鉱等を行なうう。
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