第7章 放射能対策
§2 放射能調査と対策の実施

1.環境および食品等の調査と対策の実施

 大気中の放射能調査は,気象庁,気象研究所および防衛庁によって実施されている。このうち雨水および地表付近の浮遊塵の全放射能測定は,気象官署で行なわれているほか,6箇所の気象官署から,月間の雨水および落下塵の総量が,気象研究所に集められ,核種分析が行なわれている。成層圏における浮遊塵中の放射能については,ジェット機により採取されたものが,防衛庁技術研究本部に集められ,全放射能の測定および分析が行なわれている,陸上における放射能調査としては,都道府県衛生研究所が上水・天水・土壌等について測定し,(社)分析化学研究所において核種分析を行っている。
 食品の放射能については,24の都道府県において全放射能の測定を行ない,これらのうち,牛乳,野菜等については(社)分析化学研究所が,飲料水については放射線医学総合研究所が核種分析を行なっている。
 海洋の放射能調査としては,海水については海上保安庁水路部および気象研究所が,海洋生物については東海区水産研究所が,それぞれ核種分析を行なっている。
 人体の放射能については,各地で収集した人骨,筋肉,臓器および尿の核種分析を,放射線医学総合研究所,公衆衛生院および予防衛生研究所で実施している。
 以上の調査の実施状況の詳細は,付録IV-9表に示すとおりである。
 放射能対策本部は,これらの調査結果を発足以来37年度末まで,16回にわたり,月例発表してきた。37年度における発表の概略は,付録V-1に示すとおりである。
 37年度において,とくに注目されたのは,米子地方で,38年1月における雨雪中の累計放射能が,3,243mc/km2を記録したことである。この値は,放射能対策暫定指標に定められている緊急事態の第1段階(2,500mc/km2を越えるものであった。これに先だち,放射能対策本部では,天水飲用家庭1万8,000戸に対し,簡易枦過装置を貸与する方針を決定していた。これに必要な経費(5,400万円)の4分の3を,厚生省が補助金として交付し,各都道府県が残りの4分の1を負担して,同装置の貸与が37年11月から実施された。その貸与状況は,(第7-1表)に示すとおりである。

 また,37年10月には,食品の一部131Iが増加してきたので,食品中に含まれる131Iに関する知識の普及をはかるため,付録V-2に示す月例発表を行なった。


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