第6章 放射線安全

§4 放射性同位元素の使用にともなう放射線安全

 放射性同位元素または放射線発生装置を使用しようとする者および放射性同位元素等を業として販売または廃棄 しようとする者は,障害防止法にもとづいて,科学技術長官の許可を受けなければならない。(ただし,総量が0.1キ ュリー以下の放射性同位元素を使用する場合には,届出ればよいことになっている。)放射性同位元素の利用は,第 5章で述べたとおり,医療,工業,農業等広い分野にわたりその使用事業所数は年々増加し,37年度末で,約1000箇所 となっている。これらを機関別にみると,医療機関が最も多く,ついで,工業部門,研究機関,教育機関,その他の順 になっている。

 一方,科学技術庁に放射線検査官が置かれ,放射線施設等について安全を確保するため,立入検査が行なわれている。放射性同位元素等の使用許可は,ほとんど書類審査によるので,許可または届出後に立入検査を実施して現状を把握することは,障害防止の観点から是非必要である。37年度は,まだ,検査を実施していない事業所,すでに検査済であっても放射線事故を起すおそれのある事業所および放射線管理の困難な事業所に重点をおいて,立入検査が行なわれた。37年度における立入検査の実施状況は,(第6-6表)に示すとおりである。
 放射線の管理状況を機関別にみると,工業部門,医療機関で大線源を使用する病院および研究機関で大企業の付属研究所は,おおむね良好であるが,小線源を利用する診療所,国公立の研究所および大学等の教育機関に不十分な点がみられるものもある。
 したがって,これら管理不十分な機関については,放射線安全に関する管理を厳重にするとともに,施設の整備が必要である。
 放射性同位元素等の使用者は,放射線障害を防止するため放射線障害予防規定を作成し,科学技術庁長官に届け出るとともに,放射線障害の防止について監督を行なわせるため,放射線取扱主任者免状所有者の中から放射線取扱主任者を選任しなければならない。放射線取扱主任者免状には,第1種および第2種があり,これらの所有者は,(第6-7表)に示す区分にしたがって,放射線取扱主任者となることができる。

 37年度には,第1種および第2種の放射線取扱主任者国家試験を1回ずつ施行し,それぞれ,174名および134名の合格者があった。37年度末現在の第1種および第2種放射線取扱主任者免状の所有者は,(第6-8表)に示すとおりである。

 第2種主任者免状は,35年から障害防止法の改正によって設けられたものであるため,同免状所有者は,第1種免状所有者よりはるかに少数であり,不足している状況である。機関別の免状所有者数は,(第6-9表)に示すとおりである。

 なお,この外に放射性同位元素等を医療機関において,診療のために使用する場合には,医師または歯科医師を,また,放射性同位元素等を薬事法に規定する医薬品,医薬部外品,化粧品または医療用具の製造所において使用する場合には,薬剤師をそれぞれ放射線取扱主任者に選任できるので,これら機関においては,有資格者が多数潜在していることになる。


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