第5章 放射線の利用
§4 アイソトープの供給

1.アイソトープの生産

 原子炉によるアイソトープの生産については,日本原子力研究所の創立以来,国内の需要に応じることを目標に研究を行なってきた。すなわち,32年アイソトープ製造研究室を設け,各種の製造法の検討をはじめ,とくに,輸入困難な短寿命のアイソトープおよび需要の多い数種のアイソトープについて,JRR-1を使用し製造を試みた。同研究室で開発した製法にもとづき,これを本格的生産に移すため,36年3月には製造試験設備を完成した。この施設は,JRR-3を用いて本格的に生産する場合のプロセスユニットである。製造研究の終った核種については,定常的製造に移る前に,製造上の技術的問題を検討する必要があり,この製造試験設備において試験が行なわれている。
 37年度には,とくにJRR-2を用いて,高中性子束下におけるターゲットの安定性の試験,放射化学的純度の検討が行なわれた。このほか,有機標識化合物の製造技術の検討等が行なわれている。
 これらの結果にもとづき,最近完成したJRR-3と照射したターゲットからアイソトープを生産する製造設備の建設を,38年から着手し,39年度末には完工の予定である。
 なお,日本原子力研究所では,37年8月,JRR-1を用いた24Na,32P,42K,64Cu,82Br,198Auの精製アイソトープ6核種および基準照射物質を含むアイソトープの頒布事業を開始した。
 38年度における日本原子力研究所の生産計画は,(第5-4表)に示すとおりで量的には少ないが,このうち24Na,42K等の短寿命のものは輸入が不可能で,この種のアイソトープを利用する研究には不可欠なものである。

 なお,日本原子力研究所のアイソトープの価格は輸入するものに比べて一般に安い。


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