第5章 放射線の利用
§2 アイソトープ利用

2.医学利用

 37年度における日本放射性同位元素協会からのアイソトープ出荷件数のうち,医療利用が,(第5-1表)に示したとおり,約80%を占め,基礎医学への研究はもちろん,主として国立病院,大学付属病院では,診断,治療にも使用されている。すなわち,60Co,198Auが,癌や腫瘍の治療に,たとえば,131Iの標識化合物が,甲状線の診断に,51Cr,32Pが,悪性貧血の診断に,広く使用されている。そのほか,各種放射性薬剤や,組織のオートラジオグラフィーについても,研究されている。
 放射線医学総合研究所では,放射線による人体の障害の予防,診断および治療に関する調査研究等が行なわれている。このため,60Coの3,000キュリーの大線源をはじめ,各種のアイソトープ線源や31MeVベータトロン,医療用リニアック,ファンデグラーフ,ヒューマンカウンター等が設置され,ベッド数100床の病院も併置されている。放射線障害,遺伝学,環境衛生,放射線生物学等の諸分野にわたって,研究が行なわれており,放射能調査も併せ実施されている。
 その付属病院では,放射線障害者の診断および治療とともに,放射線利用による癌,腫瘍等の診断,治療も行なわれている。
 37年中に診断,治療を受けたもののうち,入院患者は407名で,外来患者は468名であった。癌の病類別患者数は,食道・癌が最も多く70人で,ついで子宮癌,口腔癌,咽頭癌の順であった。なお,胃癌については,放射線による治療の効果が期待できないので,37年度から,あまり取扱わないことになった。また,この付属病院は,37年度から原爆被曝者の医療機関として指定された。


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