第4章 核燃料・材料および機器
§2 材料・機器その他

2.機器・その他

 (i) 圧力容器
 日本原子力発電(株)の東海発電炉の圧力容器,その付帯構造物および配管等が,国産材料を溶接加工して造られ,38年度には,電熱線加熱により応力除去を行なった後,空気圧試験が行なわれることになっている。同容器用の国産厚鋼板の照射試験が,現在英国において行なわれている。
 日本原子力研究所のJPDRの圧力容器も,国産のMn-Mo鋼を溶接加工して造られたものであり,水圧試験と漏洩試験が完了した。
 動力炉の圧力容器等は,安全性の考慮から,熱応力,地震の場合についての応力解析が行なわれており,そのうち地震の場合については,振動系としての取扱いによる方法で,主として機械学会,建築学会を中心に,試験研究がすすめられている。
 圧力容器上部ヘッドと胴部を結合するフランジの漏洩を解明するためにパッキングの選定とその限界圧力についての研究が,民間企業においてすすめられた。また,圧力容器の放射線照射による脆化についても,研究されている。さらに圧力容器の材料の溶接加工法については,低い脆性延性遷移温度をもたせるための試験研究が,国立試験研究機関,民間企業等で行なわれた。エレクトロスラグ法や配管のインサートリングによる溶接法等,新しい溶接法についても研究されている。ステンレス鋼と炭素鋼のクラッド鋼が圧延法および肉盛法によって製作できるようになっており,圧延法によるクラッド鋼も実用化の見通しがえられている。

 (ii) 蒸気発生器,熱交換器
 東海発電所の蒸気発生器の溶接加工は,その1次系について水圧試験と漏洩試験が行なわれた。2次系熱交換器用の配管には,ひれ付管が使用され,その溶接個所について水圧試験と水素ガスによる漏洩試験が行なわれている。また,その貫通部については臭気ガスによる漏洩試験が行なわれている。
 JPDRのタービン,コンデンサーは,1次系のバイパス蒸気が流入するため,とくに高い信頼性が要求されるのであるが,その溶接加工についても試験が行なわれた。熱交換器管板の溶接法として,シリーズアーク溶接法が民間企間で研究され,良好な結果がえられた。熱交換器の熱伝達特性についても研究がすすめられており,その小型化の期待できる直交流型熱交換器の基礎研究が,日本原子力研究所ですすめられている。

 (iii) 冷却材循環系機器
 炭酸ガス冷却型動力炉のガス送風機については,試作品による耐久性試験が実施されている。
 一方,軽水型動力炉に使用されるキャンドポンプは,民間企業で早くから試作研究がつづけられ,良好な結果がえられている。
 他方,キャンドポンプよりも製作費が安価な軸封型ポンプの開発も行なわれている。
 大型バルブ,フランジ等については,その機能に関しての研究がすすめられ,また,特殊なバルブの開発も試みられている。

 (iv) 計測制御装置
 放射線検出器と制御装置の分野では,半導体の使用による機器の小型化と計数効率の向上について研究されている。 一方,技術者の熟練を要する原子炉の制御を電子計算機によって自動化することが,東京芝浦電気(株)で研究された。また,1,OOO°Cの高温に耐える中性子束測定用セラミック箔が(株)明電社によって開発された。すなわち,従来,金やインジュムでは測定できなかった高温領域での中性子スペクトルが,このジスプロジウムの酸化物とアルミナを焼結させたセラミック箔で可能となった。

 (v) その他
 核融合の分野では,大学,国立試験研究機関および民間企業で基礎研究が継続されており,名古屋大学付置のプラズマ研究所は,発足後2年を経過して,陣容,施設とも充実された。


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