第3章 研究炉
§2 研究炉の整備状況

2.JRR-3

 JRR-3の建設は,34年1月からはじめられ,36年1月末には,原子炉の主要部分の据付工事が完了した。36年中に,重水系統や燃料棒の検査を終了し,37年1月には燃料棒の挿入が行なわれた。5月には軽水による模擬臨界実験が行なわれ,9月11日に臨界実験に入った。
 通常,原子炉を臨界に到達させるには,燃料棒を順次挿入していく方法をとるのであるが,JRR-3では,燃料棒の数が多いので,逆に,あらかじめ燃料棒を入れておき,つぎに,重水を徐々に注加して臨界に到達させる重水漸増方式を採用し,10段階目の重水注入によって,翌9月12日臨界に到達した。
 臨界到達後は重水液面を満水面まで上昇させ,つぎに,初期臨界実験の際に,炉心周辺部に挿入してあった模擬燃料棒が,順次,実燃料と置換えられた。この間に,制御棒較正,余剰反応度測定,出力較正等の実験がくり返され,その作業の終了によって,規定の炉心ができあがった。現在は低出力での特性試験を実施中である。原子炉特性の測定には,1年余りを要する見込みであり,この間に,照射ループの開発と利用実験の準備等をすすめる。絶対温度が零度に近い低温での金属の照射損傷を研究する目的で,低温照射ループをJRR-3に取付けるために,現在,その設計内容の検討が行なわれている。
 これらが順調にすすめば,39年度の中頃には,炉の利用が開始されるものと期待される。JRR-3が全出力定常運転に入った暁には,アイソトープ生産用の照射孔32を利用して,国内のアイソトープ需要の大半をまかないうることになる。また,この炉は,実験孔14を有し,照射試験の分野でも,大きな貢献をすることが期待されている。


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