第3章 研究炉

§1 概況

 昭和37年度末現在,研究炉および臨界実験装置は,日本原子力研究所をはじめ民間企業と大学のものを合わせ,付録IV-3表に示すとおり,研究炉8基,臨界実験装置4基が運転中である。
 このうち,特筆すべきものとしては,37年9月に,待望のJRR-3(国産1号炉)が臨界に達したことがあげられる。これはわが国が原子力開発に約10年も遅れてスタートしたという不利な条件を克服して,先進国の原子力技術を急速に摂取して,国内技術を高めてきた成果が実ったものであり,ようやく自らの手で研究炉の開発を行ないうるようになったという意味で,将来に自信と希望を抱かせるものである。
 37年度中,JRR-1は,従来にひきつづき定常運転を行なって,主として教育訓練用に利用されている。JRR-2は出力上昇試験によって,最大出力1万キロワットを出すことに成功したが,最大出力で定常運転を継続ずるには,なお,検討すべき問題が残されているので,現在のところは,6,000キロワットで定常運転し,原子炉特性の測定を行なっている。
 遮蔽研究を主目的とする研究炉のJRR-4は,38年度から,炉本体の建設に着手し,39年半ばに完成の予定である。なお,プール内に炉心タンクを設けるように,設計を変更したが,これは37年8月に許可された。
 以上は,いずれも日本原子力研究所の研究炉であるが,民間企業では,36年度中に臨界に達した日立研究炉と東芝研究炉とが,37年度には全出力運転に入った。また,三菱電機(株)は,設計出力30キロワットの濃縮ウラン軽水タンク炉を東海村に設置することを,37年8月許可された。
 大学関係では,36年度中に臨界に達した近畿大学研究炉(UTR型,出力0.1ワット)と立教大学研究炉(TRIGA-II型,出力100キロワット)とが,いずれも,順調に運転をつづけており,原子炉特性の研究と学生の教育訓練用に利用されている。また,五島育英会研究炉が38年1月に,臨界に達したのをはじめ,多年懸案であった京都大学研究炉は,37年度中に建家の建設を行ない,38年度中頃から原子炉本体の組立てに着手する予定となっている。
 臨界実試装置では日本原子力研究所の軽水臨界実験装置が,37年8月に完成したのをはじめ,日立臨界実験装置が37年9月に完成した。日本原子力事業(株)は臨界実験装置の設置を37年7月許可されたが,これは,38年末に完成する見込みである。住友原子力工業(株)も,臨界実試装置の設置を38年4月許可された。


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