第2章 動力利用
§1 原子力発電

4.原子力発電所建設計画の進展

 37年11月,日本原子力発電(株)は,現在同社が建設中の東海発電所につぐ第2号原子力発電所の建設予定地を敦賀近郊に決定した旨発表した。
 同社はかねて,福井県の敦賀半島の先端を候補地に選んで,地質の調査を行ない,その結果と立地条件を検討したが,原子力発電所の用地として適当であると認めたので,この決定を行なったものである,この発電所は,米国から軽水型原子炉を導入して建設する予定で,同社の計画では,39年4月から建設をはじめ,43年10月に完成する計画である。その規模は電気出力で25~30万キロワットである。
 第1号発電所,第2号発電所は,日本原子力発電(株)によって,建設されるものであるが,第3号発電所以降は,原子力開発利用長期計画でも電気事業者による開発に期待している。37年8月,衆議院科学技術振興対策特別委員会で,電気事業連合会理事長は,東京,中部,関西の3電力会社が原子力発電所の建設に踏切ると述べて注目された。45年度までに,これら3電力会社が,それぞれ,20~30万キロワットの原子発電所を完成させるというものである。
 一方,これと時期を同じくして,原子力産業会議は,原子力委員会に,原子力発電推進のための要望を行なったが,その大要は,つぎのとおりである,
① 政府は,原子力発電の開発を総合エネルギー政策の一環としてとりあげ,その促進を国の基本的政策として確立すること。
② 45年までの開発段階においては,発電原価が新鋭重油専焼火力より,高い見通しであるから,政府は積極的な協力と助成の方策を確立すること。
 また,具体的には,つぎの事項について要望を行なった。
 (イ) 準備開発段階における研究開発に対する政府の助成
 (ロ) 長期低利資金の確保
 (ハ) 税制上の特別措置の適用
 (ニ) 災害補償関係法制の再検討
 (ホ) 燃料政策の確立
 (ヘ) 安全性確保のための政策の確立
 原子力委員会としてば,こうした原子力発電の推進をはかる上での問題点について,電気事業者および関係製造業者と意見を交換するために,通商産業省と共催で,38年の原子力デーにあたる4月18日に,会合をもつた。
 席上,通商産業省の産業構造調査会総合エネルギー部会長から「各エネルギーには,固有の分野と競合の分野があり,後者においては,低廉性と安定性とが支配する。原子力発電は,低廉性と安定性の両課題を達成するものとして進出してくるものと期待される。」という意味の総合エネルギー構造上における原子力の位置づけについての説明があった。つづいて,電気事業者から,それぞれの原子力発電計画が述べられ,原子力発電推進上および原子力産業振興上の諸問題について,意見の交換が行なわれた,電気事業者が明らかにした原子力発電計画の内容は,東京電力(株),中部電力(株)および関西電力(株)の3社が,それぞれ30万キロワット程度発電所の建設39~41年に着手し,44~45年に完成しようというものである。これによって,45年までには,約90万キロワットの原子力発電所が運転を開始するので,45年までの前期10年の間には,日本原子力発電(株)の建設中および計画中のものを含め,原子力発電容量は約130万キロワットとなる見込みである。


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