第2章 動力利用
§1 原子力発電

3.原子力発電所建設状況

 (i) 日本原子力発電(株)東海発電所
 わが国最初の実用規模原子力発電所は,日本原子力発電(株)により,茨城県東海村の日本原子力研究所の東北隣接地で,建設がすすめられている。この動力炉は,英国から導入したコールダーホール改良型原子炉で,熱出力59万5,000キロワット,電気出力16万6,000キロワットである。
 この東海発電所の建設は34年12月に許可された。その建設工事ば日本原子力発電(株)が行なう直営工事と,主請負業者であるGECが行なうGEC工事に分れている。
 直営工事については,36年度にひきつづき,冷却水路工事および発電所本館工事を中心とした工事がすすめられた。すなわち,タービンコンデンサー冷却用水を,鹿島灘沖合500メートルから取水するための冷却水設備工事は,35年の導水路堀削にはじまり,37年度には導水路,防砂突堤工事がほぼ完成した。わが国では画期的な2本の取水管引出沈設工事が,37年7月無事完成したが,このためには,施工時期についての予備調査,工事方式についての多くの試験研究が実施された。38年中には送水管工事,循環水ポンプ等の工事が完成することになっている。発電所本館工事は36年基礎堀削にばじまり,37年度にはタービン台,タービンホール建物,事務本館建物工事がほぼ完成し,100トン・クレーンの据付も,37年12月に完了した。38年中には,建物付帯設備工事を残すのみとなっている。
 その他,原水浄化設備,補助冷却設備,補助ボイラー,ディーゼル発電機,2次系配管,主変圧器,屋外開閉所,所内変圧器等の据付工事が,38年,39年に予定されている。
 GEC工事については,GECはその下請である第一原子力グループ各社と協力して工事をすすめている。原子炉建物の施工は,清水建設(株)の手で行なわれており,35年の基礎堀削にはじまり,主遮蔽体コンクリートの打込みにひきつづいて,37年度は蒸気発生器,1次系ダクト,燃料操作用建物のコンクリート打設が行なわれた。37年4月主生体遮蔽上部を除き,ほぼコンクリート打設は完了した。
 原子炉圧力容器工事は,英国コルビル社製品の鋼板が不適当であったため,(株)日本製鋼所製鋼板を採用することとなり,(株)神戸製鋼所でプレス加工を行ない,東海現場に搬送された。この溶接工事は富士電機製造(株)が担当し,36年10月からリングベルトの溶接を開始した。37年末には球殻の溶接を完了し,37年12月から,トップキャップと燃料装入等のための管台との溶接がはじめられた,38年6月には,原子炉圧力容器の焼鈍が予定され,39年1月には耐圧試験を行なうことになっている。
 蒸気発生器は川崎重工業(株)で,胴体鋼板の工場加工および溶接が行なわれ,37年1月から,胴体の現場溶接が行なわれた。胴体の耐圧試験は4基について38年4月までに全部完了した。
 内部2次系管は英国から輸入され,溶接組立が37年秋から,工場ではじめられ,各セクションの耐圧および漏洩試験を行なって,38年はじめから現場に順次搬入されている。
 ガス循環機はGECの工場で,組立が順次すすめられ,37年2月から工場試験が行なわれた。38年7月には5台(予備1台)の工場試験が終了することになっている。
 タービン2台は,38年4月および7月に工場試験が行なわれ,発電機は5月に工場試験を完了した。
 日本原子力発電(株)は,設計変更その他の理由により,36年9月に,当初の完工時期39年7月末を40年3月末に延期し,工事資金計画も,燃料購入費を除き,当初予定の308億円から,335億円に変更した。東海発電所は,わが国ではじめてのものであり,また,安全性の上でも慎重を期す見地から関係者の間では地道な努力がつづけられている。
 この発電所建設工事の進捗状況は,付録IV-1に示すとおりである。
 一方,日本原子力発電(株)と英国原子力公社との燃料購入契約は,37年度に技術的な検討が双方で行なわれ,38年度には,契約を締結する予定である。

 (ii) 日本原子力研究所試験研究用原子力発電所
 この試験研究用原子力発電所(JPDR)は,将来の動力炉の建設,運転および保守について経験を積むこと,動力炉系の特性を明確化するための試験を行なうこと,さらに燃料要素の試験,舶用炉開発のための試験,国産化部品の特性試験,寿命試験を実施することを目的として建設されている。この原子炉は,米国GE社から導入した自然循環沸騰水型原子炉で,熱出力4万6,700キロワット,電気出力1万2,500キロワットである。
 建設工事の詳細は,付録IV-2に示すが,その概要はつぎのとおりである。
 原子炉格納容器の工事は,石川島播磨重工業(株)で行なわれており,37年2月,第1回の胴体耐圧試験および漏洩試験が行なわれ,ひきつづき37年8月,機器搬入口と作業員出入口の耐圧試験および漏洩試験が行なわれた。38年5月には,内外を貫通する管台,ベロー等の漏洩試験が行なわれた。
 格納容器内部部屋のコンクリート打込みは,37年5月からはじめられ,37年10月に終了した。
 原子炉圧力容器は,(株)日立製作所呉工場で製作され。37年5月に,日立工場に搬入され,37年5月耐圧試験が行なわれた。内部構造物は,日立工場で製作され,37年7月現地据付を完了した。
 格納容器外機器,放射性廃棄物タンク,タービン用コンデンサー等は,(株)日立製作所で製作され,37年11月,据付を完了した。タービン,発電機は東京芝浦電気(株)で製作され,37年12月,据付を完了した。
 GE社では,燃料体および制御装置,制御棒駆動装置, 一部の熱交換器,弁,配管,ベロー等を製作し,これらの機器は弁等を除き,現地に搬入された。
 燃料体は38年2月に現地に搬入され,38年3月から,現地で検査が行なわれた。
 また,38年1月から,溶接の完了した配管系統ごとに,耐圧試験が行なわれ,ひきつづき系統機能試験がすすめられている。
 38年春に予定されていた臨界は,試験関係設備の調整に手間どり,弁,配管の現地搬入が遅延したため,若干遅れる見込である,


目次へ          第2章 第1節(4)へ