第2章 動力利用
§1 原子力発電

2.原子力発電の経済性

 原子力発電の経済性については,原子力開発利用長期計画を策定した当時は,45年頃はじめて在来火力発電と競争できるようになると予想していた。ところが1962年には,米国では,ボデガベイ(電気出力31万3,000キロワット),ペンドルトン(電気出力35万5,000キロワット)等の発電所の建設計画が発表され,一方,英国では,オールドベリィ(電気出力55万キロワット),ウイルファ(電気出力100万キロワット)の両発電所が発注されたが,これらの発電所の建設費,発電コストは従来発表されていたものより格段に在来火力発電のそれに近づいており,このためわが国においても,45年以前に,在来火力と競争しうる原子力発電所を計画できる見込みが強まった。
 そこで科学技術庁原子力局および資源局と通商産業省公益事業局は,入手しうる最新の資料にもとづき,わが国の特殊事情による追加費用も考慮して,近い将来,原子力発電所を建設した場合の発電コストの推定を行なった。その結果は,(第2-2表)に示すとおりであるが,これは米国の軽水
 減速冷却炉のうち,コスト算定の前提条件が,比較的明らかにされているヤンキー(電気出力14万1,000キロワット)およびボデガベイ(電気出力31万3,000キロワット)の両発電所と同じものを,わが国に,建設した場合の発電コストを試算したものである。
 ヤンキー発電所については,建設費精算額がすでに明らかになっているのでこれによったが,ボデガベイ発電所については,予定建設費にもとづくものである。
 これによれば,近い将来,原子力発電所をわが国に建設した場合,その発電コストは,重油専焼火力よりはまだ高いけれども,石炭火力よりは安い結果となっている。


目次へ          第2章 第1節(3)へ