第9章 国際協力

§4情報および科学技術者の交流

 原子力の利用開発は,あらゆる分野の科学技術の総合の上に立って行なわれるので,国内のみならず諸外国を通じて非常に広範な科学者の協力が必要である。これまでに行なわれた最も大規模な情報交換のための催しの一つは,国際連合が主催した原子力平和利用会議(いわゆるジュネーブ会議)で,すでに,30年と33年の2回にわたっでジュネーブで開かれ,多大の成果をあげている。一方,国際的な原子力に関する情報交換の常設的母体として活動しているのは国際原子力機関で,その活動が軌道に乗るに伴い,情報交換のための機能も増大し,シンポジウム,科学会議の開催,各種資料の作成配付などを行なっている。第9-5表は36年度中,国際原子力機関の主催した会議の一覧表である。また,36年度には日本で2つの大きな国際会議が行なわれた。その第1は,36年10月10日から3日間日本原子力産業会議と日本放射性同位元素協会の主催で京都で開かれた第4回日本アイソトープ会議で,これには国際原子力機関の代表はじめ11ヵ国52名の専門家,関係者が海外から出席し,また,外国から提出された論文は27編にのぼった。

 第二は,36年12月5日から4日間東京で開かれた第二回日米原子力産業合同原子動力会議で,これには米国から産業界の代表の外に,原子力委員,会のウイルソン委員,ウエルズ国際部長ら68名,国際原子力機関,ユーラトム,カナダ,ヨーロッパ,東南アジア等から40名が来日し,米国の新燃料政策の発表のほか,多くの講演,研究発表,討論などが行なわれた。
 また,これらの国際会議のほかに,この年も(付録6表)にみるように,多くの海外の原子力関係者が来日した。わけても,ユーラトムのヒルシユ総裁一行の来日は,ユーラトムからの初の公式訪問者であるということだけではなく,今後,わが国とユーラトムとの間に情報の交換,科学者の交流一などの協力関係を結ぶための端緒をひらくものとしてきわめて有意義なことであった,ユーラトムは,軍事利用と関係のない平和目的専門の組織である点で,わが国と共通しているだけでなく,驚異的な発展をとげつつあるヨーロッパ共同市場傘下の各国を背景に,独特の原子力開発を推進しつつある現状からみても,わが国としてこれと緊密な協力関係を結んで得るところは非常に大きいといえよう。
 一方,わが国からも36年6月池田前原子力委員長が世界各国の原子力開発状況を視察するため英国,国際原子力機関,西独,ユーラトム,欧州原子力機関,フランス,カナダ,アメリカを歴訪したのをはじめ。第9-6表。
 にみるように核燃料再処理調査団など4調査団が海外へ派遣されるなど,海外との交流はきわめて活発に行なわれた。


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