第8章 その他の研究開発

§6 直接発電

 現在の発電所は,水力,火力を問わず,また原子力発電所であってもすべて水車あるいはタービンを用い,力学的手段を中介として発電機を働作させる方法によって発電を行なっている。ところが,近年全く新しい発電方法として,力学的段階を経ずに,熱源から直接電力を得ようとずるいわゆる直接発電の実現が探究されるようになってきた。
 直接発電にはいろいろな方法があって,それぞれ研究がすすめられているが,いずれも可動部分をなくして構造を簡単にすること,在来汽力発電と組合せることによって熱源の高度利用を図ることが共通の開発目標になっている。すなわち,直接発電は,建設費が安すいばかりでなく,可動部分がないので信頼度も高いものとなるほか,在来汽力発電と組合せれば,在来汽力発電の熱効率の最高40%を総合で60%程度に高めることができると考えられている。
 直接発電の方式の主なものは,熱イオン発電,熱電気発電,電磁流体発電(MHD発電)であるが,わが国では,電気試験所と原子力研究所で,電磁流体発電の小規模予備実験が行なわれている。電磁流体発電の原理は,機構こそちがうが,古くからある発電機のそれと変らない。磁界の中で電線を動かす代りに,導電性気体(高温プラズマ)の噴出を行なうと,導電性気体中に電線の場合と全く同じ原理により電流を生ずるという仕組みである,問題は,導電性気体が接する器壁と,電力を取り出すブラシに相当する電極の融点以上に温度が上げられないことであって,当面2,500°C以上の温度で運転できる材料は得難いと考えられている。しかし,この程度の温度では,ヘリウムや燃焼ガスの熱電離は十分に行なわれない,このため,アルカリ金属を気体に少量混入して導電性を増加させる方法が考案され,現在この方法により研究がつづけられている,電磁流体発電は,外国でもその開発には大きな興味と期待がかけられており,米国では化石燃料加熱方式ではあるが,すでに数百kwの発電能力を持つ実験装置の組立が行なわれた。
 今後,電磁流体発電等直接発電方式は,高温ガス冷却炉等と組合わせられて実用化することが考えられており,直接原子炉には関係のない技術ではあるが,核融合による発電技術の先駆として,また,核分裂による原子力発電の展開を進める技術として,将来を注目されている。


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