第8章 その他の研究開発

§4 放射性廃棄物処理

 原子力の開発利用の進展にともない,原子力関係施設から排出される放射性廃棄物の量は漸増してくるので,さしあたっては,各施設から生ずる放射性廃棄物を日本放射性同位元素協会が一元的に集めて,貯蔵施設に貯蔵するにしても,今後増大を予想される放射性廃棄物に対し,その合理的な処分方策を確立することが必要である。このために,原子力委員会は36年3月,廃棄物処理専門部会を設けて放射性廃棄物の処理ならびに処分についての基本方針の検討,および国際原子力機関の海洋投棄パネル勧告案等の検討を開始した。廃棄物処理専門部会は,37年4月にそれまでの審議結果をとりまとめて中間報告を提出したが,その内容は,放射性廃棄物の処理ならびに処分の基本方針としては 1)現在の知識から安全であることが立証されないような廃棄の仕方はしないこと 2)国民線量の立場から放射性廃棄物による被爆線量の割り当てを決めるのが望ましいこと3)放射性廃棄物の海洋投棄処分については,国際的視野ならびにわが国の海洋利用の特殊性を考慮して慎重に実施すべきこと 4)放射性廃棄物の処理処分については今後さらによりよい方法を得るため,積極的な研究開発を行なうこととなっている。また,国際原子力機関の放射性廃棄物の海洋投棄に関するパネル報告に関しては,各項目ごとにわが国の事情を考慮しつつ検討が加えられ意見がまとめられた。この報告は,放射性廃棄物処理に関するわが国学界の意見を代表するものと考えられるので,海外諸国の関係方面に資するため,国際原子力機関の事務局にも送付された。
 廃棄物処理は安全であるとともに安価でなくてはならない。このため政府では,36年度に約780万円の研究委託費および研究費補助金を費やして,放射性廃棄物処理研究の助成を行なった。すなわち,放射性廃棄物容器と海洋条件との関連性に関する基礎的研究として,放射性廃棄物の容器に用いられるべき金属の長期にわたる腐食や長期にわたるコンクリートの透水性,耐圧性,腐食性等の研究が,放射性廃液の簡易処理法としてフロキュレーションによる除染と有効薬剤の検索が,また,中レベル放射性廃液を濃縮するための濃縮釜設計資料を得る研究がそれぞれ民間企業で行なわれた。
 36年度の日本放射性同位元素協会における放射性廃棄物の集荷状況は,第8-1表にあるように,体積でおよそ52立方米で,その約89%が関東で集荷された,ものとなっている。


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