第8章 その他の研究開発
§3 原子力関連機器

3−1 原子炉関連機器

 軽水冷却炉の圧力容器については,これまで民間企業で肉厚のクラッド鋼板による試作試験が行なわれてきたが,36年度から新しく渦巻式多層圧力容器の試作研究が開始された。この研究では,小型圧力容器により巻きつけ工作法について種々検討し,つぎにこれによって得られた最良の工作法にしたがって予備試験用ならびに本試験用各供試容器を製作し,その水圧破壊試験を実施し,変型状況,応力状況,破壊圧力,破壊状況等を測定し,渦巻型圧力容器設計製作上の資料を得ようというものである。
 また,高張力鋼板の溶接については,前年度にひきつづき厚さ100 mmの高張力鋼について,溶接材料およびフラックスの開発,サブマージドアーク溶接法,エレクトロスラグ溶接法および炭酸ガス溶接法の施行法の実用化,ならびに溶接部試験についてそれぞれ研究開発がすすめられた。
 熱交換器については,これまで軽水冷却2重サイクル系および炭酸ガス冷却炉用熱交換器等について研究が行なわれた。36年度は,前年度にひきつづき原子炉用熱交換器工作方法上の問題,すなわち新しい溶接方法についての開発が民間企業で行なわれた。この方法は,熱交換器においてしばしば問題となるチューブとチューブシートとのCrevice(割れ目)Cor-rosionを避けるためチューブシートから削り出した管状突起部とチューブとを内面から突合溶接しCreviceのない接合を行なおうとするもので,このため溶接電源,冶具本体,駆動装置,制御装置および接合トーチから成るTIG全自動溶接装置の設計製作が行なわれた。とくに溶接トーチにはミクロトーチが新しく試作された。試験片にはチューブシートとして厚さ200mmのステンレス鋼板およびステンレスクラッド鋼板を,チューブには径19mm,肉厚2mmのステンレスチューブを用い,溶接部について各種材質試験を行ない,溶接条件の研究が行なわれた。
 バルブについては,民間企業で原子炉用ステンレス製大型バルブの製造研究が行なわれ,とくに内部欠陥のないステンレス鋳造品の製造について研究が行なわれた。すなわち,厚肉鋳鋼品用として適当な鋳型材料について適当なものを見つけること,および低炭素ステンレス鋼で鋳造を行なう際の押湯の容量,位置,形状等について検討が行なわれたほか,18-8ステンレス鋼について鋳造,焼鈍,冷却条件と組織の関係,常温および高温での機械的諸特性についての研究が行なわれた。


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