第8章 その他の研究開発
§2 原子炉材料

2−2 黒 鉛

 原子炉用黒鉛は,29年以来開発が続けられ,減速材および反射材としての黒鉛はすでに,外国製品に劣らない品質のものを製造できる技術が民間企業によって確立された。
 他方,原子炉は次第に高温,高出力密度のものが要求されるようになり,半均質炉のように核燃料の外套として金属に代って黒鉛を使用するアイデアが生れ,34年以降の黒鉛製造の研究は,主として核燃料外套用不滲透黒鉛の製造に集中されている。すなわち,黒鉛に変成タール(ピッチにニトロ化合物を加えたもの)を滲透せしめて焼成する方法を数回くり返して不滲透黒鉛のパイプを作り,高温における炭酸ガスの浸触に耐えるよう表面に化学蒸着法によるカーボランダムコーティングを施したものの試作が行なわれたほか,ジビニルベンゼンおよびフルフリルアルコールを不滲透化用含浸剤として使用して,気体透過度10-8cm/secの耐熱性不滲透黒鉛の試作が行なわれた。また,耐熱性不滲透黒鉛による燃料要素組立のため, MoSi2,Fe-Mo合金等を融着剤として高温で融着あるいはアルゴンアーク溶接機で融着する方法の開発が行なわれ,燃料要素の組立が可能であるという見通しを得た。
 36年度には,高温ガス冷却型原子炉の核燃料外套として,黒鉛の気孔を炭化水素等の熱分解で充填するとともに,表面に熱分解黒鉛を沈着させて,1,200°C以上の温度に耐えて炭酸ガス等の液化性クーラントに対し安定でしかも核分裂生成物およびクーラントに対して不浸透な黒鉛の製造法の開発が開始された。
 他方,原子力研究所では,半均質炉の開発に関連して黒鉛の機械的強度,ろうづけおよび高温における熱伝導度について研究がつづけられ,破壊強度の統計的検討,疲労強度試験とならんでグラスカーボンについての機械的性質の予備実験が行なわれた。また,金属チタンと黒鉛の接合等にも成功したほか,高温における熱伝導度測定のための装置の組立が行なわれた。


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