第7章 規制と防護
§3 規制の強化

3−2 原子炉安全専門審査会の発足

 原子炉の安全性に関する審査は,原子力委員会が同委員会設置法の施行令に基づいて,原子炉安全審査専門部会を設けて実施してきたが,35年5月の原子力委員会設置法の一部改正の際に,国会の付帯決議として,原子炉の安全審査について,さらに公正を期するため責任ある審査機関の法制化が要望されていた。この付帯決議の趣旨を尊重して,36年4月,同法の一部改正が行なわれ,従来の安全審査専門部会を廃し,学識経験者および関係行政機関の職員30名以内で構成する原子炉安全専門審査会の設置が決定された。
 原子炉審査専門部会は,33年5月に発足してから36年8月30日の解散までに日本原子力発電のコールダーホール改良型原子炉をはじめ11件の原子炉および4件の臨界実験装置の安全審査を行ない,専門部会として13件の報告を行なった,これにつづいて,8月31日に原子炉安全専門審査会が発足し,同日,その第1回審査会が開催された。
 36年度においては原子炉として,JRR-4,京都大学研究炉,JRR-2(一部変更)およびJPRD(一部変更)に関し,また,臨界実験装置として,原研沸騰水型(一部変更を含む)日立沸騰水型の両臨界実験装置について答申が行なわれた。また37年1月から,三菱電機研究炉,2月から日本原子力事業沸騰水型臨界実験装置および原研水均質型臨界実験装置(一部変更)の審査が開始された。
 京都大学研究炉およびJRR-4は,ともに熱出力連続最大1,000kWの濃縮ウラン軽水減速冷却型研究用原子炉であって,燃料はMTR型を使用している,これら両原子炉の審査にあたっては考えうる事故として,反応度事故,冷却系事故,および燃料要素の破損をとりあげて検討したが,JRR-4については,実験による反応度外乱,冷却水事故等により原子炉に,加えられる反応度は多くとも1%以上で仮りにスクラムされなくとも安全であり,起動時および運転中における調整安全板の誤動作によって,原子炉の受ける最大の反応度変化および反応度変化率は,それぞれ,1.0%および0.5%/分であるが,燃料の溶融等にいたることなく十分に安全が保てることが認められた。また,燃料要素の溶融事故は起りえないが,アルミニウム被覆の腐蝕,疲労などによって,万一,被覆に約1cm2の破損が生ずれば,冷却系に備えられたモニターなどで検出されるが,仮に,この程度の破損により核分裂生成物が外部に放出されても最も問題となる181Iの影響は,最悪気象条件下においても科学技術庁告示に定められた許容被ばく線量をはるかに下まわり,問題はないものと評価された。京都大学原子炉についてもほぼ同様の審査ならびに評価がおこなわれ最悪の事態においても,原子炉はもとより,周辺の一般公衆に対して放射線障害のおそれはないと判断され,JRR-4とともに,3月の審査会でその安全性が確認された。
 臨界実験装置については,36年1月から原子力研究所および日立製作所の軽水減速臨界実験装置について審査が開始され,事故解析としては,制御棒の連続引抜き,連続注水,ボイド消失,ポイズン脱落等が考慮され,最悪の事態においても,エネルギー解放はそれぞれ140MW・秒および150MW・秒以下で,燃料溶融はおこらず,従業者および一般公衆に対する放射線障害の防止上問題はないものと評価され,9月に答申が行なわれた。
 また,JRR-2燃料の濃縮度の上昇,JPDRおよび原子力研究所の沸騰水型臨界実験装置の燃料加工法の変更については,いずれも,安全上支障がないと報告された。


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