第7章 規制と防護
§1 概況

 原子力平和利用活動の安全性に関する規制は,核原料物質,核燃料物質および原子炉の規制に関する法律(32年12月施行)および放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(33年4月施行)に基づいて行なわれている。これら両法によって,核原料物質,核燃料物質,原子炉,アイソトープ,加速器等の適正な取扱いが使用者等に義務づけられているほか,放射線作業従事者の最大許容線量,事業所から放出される放射性物質の最大許容濃度等放射線防護の基準が示されている。
 原子力技術が発展途上にあり,制定当時予想された事態に変化があらわれ,その規制の適正化をはかる必要から,現在までに数度の法令改正が行なわれた。35年度には,国際放射線防護委員会(ICRP)の1958年勧告が検討され,これら2法律について放射線障害の防止のための技術的基準の改正が行なわれたが,36年8月には,原子炉等規制法令の改正が行なわれ,原子炉等原子力施設の規制の強化がはかられるとともに,原子力委員会設置法の一部改正により,33年以来活動をつづけてきた原子炉安全審査専門部会は,原子炉安全専門審査会に改組された。
 また,これよりさき,政府は,英国医学研究審議会(MRC)の「一般人の緊急時被ばく許容線量」に関する報告書に対するICRPのステートメント(34年11月発表)が,原子力施設の安全性の審議に重要な関連をもつものとして,放射線審議会に意見を求めていたが,同審議会は,緊急被ばく特別部会を設けて審議を行ない,36年8月,内閣総理大臣に答申した。
 一方原子力委員会では,原子炉安全基準部会を設けて原子炉安全基準の検討をつづけているが,36年度には,放射線審議会の上記答申をもとにして,わが国において,採用すべき緊急被ばく線量の検討をすすめた。


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