第6章 放射能対策
§5 調査結果

5−1 大気および環境の放射能

 36年9月,ソ連が核爆発実験を再開するまでは,大気中の放射能レベルは非常に低下していたが,再開後においては,急速に上昇し,初期においては,10日毎に約10倍程度づつ上昇し,10月中旬および11月初旬には,非常に高い値を記録した。とくに,50メガトン超大型水爆実験の直後の11月15日には,福岡で,雨量もすくなく局地的ではあったが,1,820μμC/CC(定量測定)*の最高値を記録した。しかしその後は,全国平均値で数μμc/cc程度に下っている。

 36年9月以降37年3月までの雨水の放射能(定時測定)**の旬間全国平均値の推移は,第6-3図のとおりである。
 放射能対策本部は,東京で10月27日に採取した雨および千葉で11月7日に採取した雨についての核種分析の結果を発表したが,これによると,(1)希土類99MO,131I,239Npなどが多く含まれ,半減期1年以内のものが96%以上であること,(2)特に注目されている核種のうち,89Srおよび90Srは約2%,131Iおよび133Iは約20%,137CSは検出されない程度であるとのべられている。
 また,成層圏(12,000m)における浮遊塵の放射能は,第6-4図にみられるように,かなり高い値を示している。特に,北海道上空は非常に高く30〜40日の間隔で放射能の強さの変化がみられる。
 これに対して,地表付近における空気中の塵の放射能は,大体の雨の放射能と同様の傾向を示しており,11月中旬以降は,10μμc/m3程度になっている。
 落下塵や雨によってもたらされる地表面おける放射性降下物の中で,特に問題となる90Srおよび137CSの分析測定は,気象研究所が東京で実施しているが,ソ連が核実験を再開してから,36年末までに,90Srについては,1.1mc/km2が,また137Csについては5.6mc/km2が地上に降下しており,36年12月までの90Srおよび137CSの総降下蓄積量はそれぞれ26.8mc/km2および77.6mc/km2であった,東京における90Srの月間降下量および降下積算量は第6-5図の通りで,今回の月間降下量は,34年前期における降下量に比較するとかなり低い。


* 降り始めの1mmの雨を対象にしてその放射能を測定するもの。
** 午前9時から24時間中の雨を対象にしてその放射能を測定するもの。

 日本近海における表層海水の放射能測定は,気象庁が本州東方,本州南方,九州南西方および日本海の各海域において実施されているが,その調査結果は,第6-6図の通りで36年度後半に放射能レベルの上昇がみられる。


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