第6章 放射能対策

§4 調査の状況

 わが国における放射能調査は,31年以来実施されたが,放射能監視体制の強化拡充が行なわれて,36年度後半以降次のように実施されている。
 大気放射能調査は,気象庁,気象研究所および防衛庁によって実施され,このうち,雨水,および落下塵については,14ヵ所の気象観測所で全放射能の測定が行なわれている。
 このうち,6ヵ所の観測所からは,毎月1回,月間の雨水および落下塵の総量が,また,日々の雨水のうち,放射能の強いものが適宜,気象研究所に集められ,核種分析が行なわれている。また,成層圏における浮遊塵中の放射能については,防衛庁技術研究本部が,ジエット機によって,1ヵ所で月2〜3回試料採取および測定を行なってきたが,10月以降は,北海道,中部および九州の3ヵ所で連日試料の採取測定を行なっている。
 陸上放射能については,各都道府県衛生研究所が陸水を,農業技術研究所が植物への汚染との関連において,土壌の調査を行なっていたが,36年度後半以降,陸水(上水,天水,井水)については,4〜9都道府県から24都道府県に拡大され,測定回数は年4回から月1回に増加され,また,これら都道府県の陸水の核種分析が,放射線医学総合研究所で行なわれている。このほか,天水の核種分析は,海上保安庁水路部において14ヵ所の灯台より天水を集めて分析が行なわれている。土壌については,農業技術研究所が,4ヵ所で毎月1回核種分析を実施している。
 動植物および食品の放射能については,これまでに都道府県の衛生研究所が,野菜,穀類,牛乳等について主として全放射能測定を行なってきたが,36年度後半以降は,野菜および牛乳の核種分析に重点をおき,これらの地方衛生研究所が採取した試料を放射線医学総合研究所および分析化学研究所で分析しているほか,牛乳については,畜産試験所および公衆衛生院でも分析を行なっている。例えば,これまでの野菜の核種分析は,年24回,牛乳は年48回程度であったが,強化後は,前者で年588回,後者で年660回となっている。また,日常食品については,栄養研究所が核種分析を実施している。

 海洋放射能については,気象庁が海水および海底土を,水産研究所が海洋生物を,また,東海区水産研究所が海産物についてそれぞれ測定を行なっている。
 人体については,放射線医学総合研究所が臓器,入骨中の90Srおよび地方衛生研究所で採取した尿中の137CSの調査を行なっている,37年度には,公衆衛生院および予防研究所によって筋肉中の137Csや歯の中の0 9Srの分析が実施される予定である。


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