第6章 放射能対策
§3 放射能対策の実施

3−1 放射能監視組織の拡充強化

 わが国の放射能調査は,32年度以降,関係各省庁および試験研究機関の密接な連けいの下に行なわれてきたが,ソ連の核爆発実験が再開されるまでば,全体的に放射能レベルは低下し,もっぱら平和利用による放射能レベル変化の把握に重点がおかれてきたため,調査は,ほとんど全β放射能測定で実施され,この中に含まれる問題となる放射性核種の分析は,ごく一部のものについて行なわれていたにすぎなかった。
 したがって,10月中旬以降における放射能レベルの上昇は,これまでの放射能監視体制では不十分であるので,第6-2図に示すように,地震計および微気圧計による核実験探知網を設けて,実験の実施地点,時刻,および規模を推定し,さらに,防衛庁のジエット機によって成層圏における放射能レベルの観測を行ない,全国14の気象観測所では雨の放射能を監視している。


* 特定の核種をとりあげずに,全体の放射能のうちとくにβ線だけを測定ずる方法

 また,これまで重点がおかれていた落下塵,雨水,土壤,海水等のいわゆる環境放射能の全β線放射能測定の測定回数を増やし,また,地域的拡大をはかるとともに,これらの中に含まれる問題となる放射性核種の分析を開始する一方,飲料水(天水,井戸水)野菜,牛乳,日常食品等についても,その測定分析をとくに強化し,全国的に実施している。
 このため,従来まで調査活動を行なってきた気象庁,気象研究所,農業技術研究所,海上保安庁,各区水産研究所,放射線医学総合研究所等の調査機能を増大し,これに,国立衛生試験所,公衆衛生院,畜産試験所,社団法人分析化学研究所等を加え,また,放射能調査を委託していた14都道府県を24都道府県に拡大するなど,わが国における放射能調査分析体制の確立をはかつた。
 また,これらの監視体制の確立と併行して,測定分析方法,測定結果の公表方法等の統一がはかられた。


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