第6章 放射能対策

§2 放射能対策本部の活動

 9月1日以降連続して行なわれた核爆発実験は雨や落下塵とともに大量の放射性降下物をもたらし,各地で放射能レベルの上昇が観測された。科学技術庁,厚生省,気象庁などの関係省庁は,この情勢に対処するため,10月中旬以降放射能調査連絡会を開催して協議を重ね,放射性降下物に対する「一般的留意事項」の発表を行なったが,10月末の超大型核爆発実施の予告を受けるなどの事態に立ちいたり,放射能対策を強力かつ総合的に推進するための統一的機関の設置が要望された。
 このような情況の下に,科学技術庁長官である国務大臣を長とし,関係省庁の局長などを構成員とする放射能対策本部が10月31日の閣議決定により内閣に設けられた,同本部には,その運営を効果的に行なうための関係省庁の課長などからなる幹事会,核実験による放射性降下物の基準の作成を行なうための関係機関担当官および学識経験者からなる環境放射能作業班ならびに暫定的な事務機構としての連絡室が設けられた。

 放射能対策本部は直ちに活動を開始し,設置決定の翌日の11月1日には第1回本部会議を開催し,運営方針および放射能対策の進め方などについて検討した。その後,同本部は,発足以来37年3月末までに,4回の本部会議と12回の幹事会を開催し,放射能の測定分析結果の定期的,統一的公表(6回)を行なうとともに,11月14日に閣議決定をみた放射能対策措置要綱に基づく放射能測定分析体制の強化,放射能の影響および防護に関する研究の推進などのほか,環境放射能作業班による放射能水準に対応した具体的行政対策基準の作成をすすめた。
 このため,これに要する経費として,36年度には,年度当初の放射能調査費4,717万円のほかに,予備費および既定経費の流用によって3,692万円が,また,特別研究促進調整費から2,984万円が追加され,総計1億1,393万円が支出された。放射能調査経費の年度別推移をみると第6-1図のとおりで,機関別経費の増加がみられる。


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