第5章 放射線の利用

§4 放射線化学

 放射線化学は,その活発な基礎研究によって将来化学工業に非常に大きい役割を果すものと期待されている。しかしこれを実用化に移すには,放射線化学特有の反応を見い出すことや,放射線のコストの低下など種々な問題を解決しなければならない。そこで原子力委員会は,35年5月,わが国の放射線化学に関する研究開発上の問題点の調査検討を行なうため,放射線化学専門部会を設けた。専門部会では,原子力委員会のこの諮問について検討した結果,原子力研究所内に放射線化学の中央研究機構を設けて,民間産業,研究機関等において開発された有望な反応についての中間規模試験,放射線工学および線源の開発などを行なうよう報告し,解散した。また,36年4月,新らたに放射線化学専門部会が設けられ,(1)わが国における放射線化学研究の総合的開発の基本方針および (2)放射線化学中央研究所(仮称)の整備に関する考え方の検討が行なわれている。
 原子力研究所では,36年度から前記答申に対応して準備室を設け,放射線化学中央研究機構を設けるための調査研究を始めた。9月に原子力研究所がまとめた。放射線化学中央研究所(仮称)の設立計画書によれば,(1)中間規模試験 (2)放射線化学研究 (3)放射線工学研究 (4)化学用原子炉に関する調査等の業務を行なうこととなっており,施設の整備については,37年度より3年計画で約43億円の資金が必要であるとしている。研究所の設置に必要な予算措置として,37年度予算には,60Co大線源等各種施設の建設のため,1.6億円が計上されており,研究所の敷地も近く決定されることとなっている。


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