第5章 放射線の利用
§3 アイソトープの利用

(1) 医学関係

 第5-5表のように36年度のアイソトープ出荷件数のうち医学関係が全体の約77%を占め,これらは,基礎医学や診断および治療などの臨床面にも広く用いられている。
 放射線医学総合研究所では36年5月病院部を開設した。ここでは,放射線障害に関する臨床方面の診断および治療にあたるほか,放射線利用による癌などの診断および治療を行ない。また,アイソトープの医学への応用に関する調査,研究,これに要する技術者の養成訓練などを行なっている。
 現在ベッド数は100床である。
 病院部に設置されている主な施設は,60C0,137CS各2,000キュリー,31MeVのベータトロンなどの照射装置および人体中の放射能を測定するヒューマンカウンターがあり,37年度には,6MeV医療用線型加速器の設置も予定されている。

 病院部で36年5月から37年3月までの間に,診断および治療を受けた患者についての調査によると,入院患者数は301名,このうち転帰したもの271名で,内訳は第5-6表のようになっている。また,外来患者は363名で,平均通院回数は2.9回であった,これら患者を病類別に上位10位をみると,第5-5図のように,治療例では食道ガンが88件で圧倒的に多く,アイソトープを使用した診断は71件で腎臓,肝臓,甲状線等の機能横査が多かった。

 12月には,原子炉施設等を利用する生物実験を行なうための放射線医学総合研究所東海支所が完成した。この施設は研究所以外の人にも開放することとなっている。


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