第4章 核燃料
§2 わが国の開発状況

2−4 燃料の製造加工

 金属ウランの加工の研究としては,JRR-3の取替燃料を対象として,原子力研究所,燃料公社を中心に民間会社の協力のもとに,行なわれている。
 加工技術については,海外技術の導入も行なわれ,また,原子力平和利用委託費や補助金によって核燃料の製造および加工の試験研究を助成しており,これらの援助を受け,試作された試料の海外機関への照射試験も良好な結果が得られた。 一方,東京工業大学の指数実験装置の燃料の加工を通じて,トン単位のウラン棒加工に関する生産工学的経験も得られたので取替燃料等については,十分国内で加工し得る段階にたっしており,取替燃料6トンの発注も,36年5月に国内メーカーになされた。
 ウラン-アルミニウム合金としては,主として原子力研究所で,40%ウランおよびそれに3%の硅素を添加した合金の熱間および冷間加工性におよぼす因子を検討し,現在小型試験片によるウラン-アルミニウム合金の物理的諸性質の試験は一応終了し,今後は,国産実物大燃料体の照射による確認試験が残されている。基礎的な研究成果の一つとしては,この合金のアルミニウム側に,ウランの固溶範囲が,高温でわずかながら存在するのを発見したことと,合金中におけるウランとアルミニウムとの化合物の挙動につき,詳細な解明をなしえたことである。
 セラミック系燃料体に関する研究については,UO2を中心に,その製法,ペレットの試作等の研究が補助金の交付を受けて民間企業間で行なわれた。このうち一,二のものは試作したUO2ペレットの照射が海外の機関に依頼され,照射後,37年初めにはわが国に送り返され,現在,原子力研究所で照射後試験が行なわれている。
 原子力研究所の半均質炉臨界実験装置,日立研究炉および日立臨界実験装置の燃料とに用いられるUO2粉末は,濃縮ウランであるので,米国より輸入されたが,成型加工は国内民間企業により行なわれた。
 このほか,二酸化ウラン粉末に金属被覆をする試験研究や,中空型二酸化ウラン燃料要素の製造に関する試験研究等に補助金が交付されている。
 動力炉は,発電コストの低減,出力密度の増大を目指して,高温運転の方向に発展しつつあり,わが国の半均質炉も,燃料体温度は1500°Cを企図している。このため,これに適する燃料として,民間企業において,炭化トリウム質燃料や,粒状炭化物核燃料の製造研究が進められている。また,船舶用原子炉を中心に,海外で開発されつつある酸化ベリリウムー二酸化ウラン燃料は,その優れた熱伝導性,照射安定性等から注目されておりわが国でも,原子力研究所と民間の協同で原料の調製,成形研究,焼結体の特性試験などが行なわれている。
 燃料の製造研究に平行して,従来から各種被覆材の製造および加工の研究が進められてきているが,原子力研究所では,原子炉構成材料の中性子照射特性に関する冶金的研究の一環として,マグノックス合金の照射効果の検討が行なわれており,民間企業でも政府補助金を得て,ビスマス耐食材として良好な金属ベリリウムを,軟鋼,ステンレス鋼等に被覆する技術を開発することを目的として,押出法によるベリリウムの被覆に関する基礎的研究を行なっている。また,被覆材を燃料に圧着させる方法の研究としては,最近,注目されてきた,爆薬利用の金属圧着法を燃料要素被覆技術に応用し,その適合性について,現行諸法との比較検討が補助金の交付を受けて民間で行なわれている。


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