第3章 原子炉

§4 動力炉

 わが国最初の原子力発電所は,日本原子力発電により,茨城県東海村の原子力研究所の東北隣接地に建設がすすめられている。ここに設置されている動力炉は,英国のGEC社から輸入されたコールダーホール改良型原子炉で,熱出力59万5 000kW,電気出力最大16万6,000kWである。
 本東海発電所は,34年12月に内閣総理大臣から原子炉の設置が許可され,36年3月に通商産業大臣から第一次分割の工事施工認可が与えられて以来,36年度には,第二次分割分も認可され,原子炉施設工事,土木建築工事等かなり進展し,37年5月現在建設は最盛期を迎えている。
 発電所の建設工事は,日本原子力発電が行なう直営工事と,主請負業者であるGECが行なうGEC工事に分れている。直営工事については,そのうちの調査工事,準備工事,付帯工事はほぼ36年3月までに終了し,36年度には,冷却水路工事および発電所本館工事を中心とした本工事が進められた。すなわち,コンデンサー冷却用水を鹿島灘沖合500mから取水するための冷却水設備工事は,導水路溝掘削等の陸部工事が35年度にほぼ終了し,36年度には,防砂突堤工事等の海部工事が順調に進められ,あとは37年夏に行なわれる沈設工事を待つばかりとなっている。発電所本館工事については,36年10月にタービンホール部の基礎堀削が完了,37年3月から鉄骨建方が開始された,事務本館についても,これより少し遅れて同様の工事が進められた。また,国内製造業者に対して,循環水ポンプ,変圧器等10件の機器の発注が行なわれた。
 GEC工事については,GECはその下請である第一原子力グループ(FAPIG)各社と協力して工事をすすめており,36年7月に重量物吊込用の高さ120mのメイン・デリッククレーンの組立が行なわれた。原子炉建物についての工事は,36年7月から遮蔽コンクリート工事がはじめられ,熱交換器ビル,燃料操作ビル等もコンクリート打設がすすめられた。原子炉圧力容器工事については,当初圧力容器鋼板は,英国コルビル社から輸入することになっていたが,品質不良のため,36年6月に国産に切換えることになり,株式会社日本製鋼所に発注された。同所は,ただちに製作にかかり,8月以降37年1月までに所要全量1,678トンを株式会社神戸製鋼所に送つた。神戸製鋼所は,10月以降37年3月末までにほとんどその加工を完了し東海現場に搬送した。東海現場では,10月から各部分の溶接を開始し,3月末には,原子炉建物内へ下部スカート等3部分の吊込みが行なわれた。
 熱交換器の製作については,川崎重工業株式会社で胴体用鋼板の工場加工が順調に進められ,36年11月から37年3月までに,第3熱交換器と第4熱交換器の大半が,分割して現地に搬入された。第1および第2熱交換器の工場製作は予定どおり進捗している。
 東海発電所では36年度に工期の変更がおこなわれた。すなわち,日本原子力発電では,東海発電所が技術,規模等の点でわが国はじめてのものであり,また,とくに安全性の諸問題について,慎重を期するために努力を重ねていたが,GECと検討を続けた結果,36年9月末,主として次の三つの理由から工期予定を8ヵ月遅らせることを発表した。
 (イ) 安全のための考慮を追加し,そのため一部の設計変更を行なったこと。
 (ロ) 設計基準を当初の計画から一部変更したこと。
 (ハ) 輸入鋼板のかし(瑕疵)により,その発注先を変更したこと。
(イ)については,ガスダクト事故対策等を充実させるためのものであり,(ハ)については,輸入鋼板の開先切断面に細かい疵のあるものが多数発見されたために,英国側の責任においてこれをすべて廃却し,日本製鋼所に発注替えしたものである。
 これにより,工期予定は,当初の39年7月末から,40年3月末に延期され,工事資金計画は,当初予定の308億円から,335億円に変更されることとなった。増加分27億円の内訳は工事費関係13億円,建設利息7億円,運賃・保険その他7億円となっている。


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