第3章 原子炉
§2研究用原子炉

2−2大 学

(1)近畿大学研究炉
 近畿大学研究炉は,UTR型,出力0.1Wの原子炉である。同大学では,32年以来,原子力研究所の設立と原子炉の設置について検討していたが,34年5月に原子力研究所設置準備委員会が設立され,原子炉設置計画が具体化した。35年4月,原子炉設置許可申請書が提出され,8月に内閣総理大臣から許可が与えられた。
 建設工事については,原子炉格納施設工事が,35年8月にはじまり,炉本体据付工事も順調にすすみ,36年11月11日に臨界に達した。原子炉の敷地は,大阪府布施市の同大学構内であり,設置に要した経費は,土地代を除いて約1.6億円とされている。
 同原子炉は,わが国ではじめて学校法人が所有するものであり,かつ,関西で稼動を開始したはじめての原子炉であるので,施設を広く開放し,産学協同に役立たせるとされている。原子炉の管理および利用は,同大学原子力研究所長のもとに,原子力研究所運営委員会および原子炉施設利用委員会によって行なわれる。同大学は,36年度から理工学部に原子炉工学科を新設したが,今後はこの炉を利用して,原子炉特性等の研究や原子炉の運転訓練を行なうこととなっている。

(2)立教大学研究炉
 立教大学原子炉は,米国聖公会から立教大学に寄贈されたTRIGA-II型,出力100kWの原子炉である。当初は,1,000kWの国産水泳プール型原子炉の設置が考慮されていたが,諸種の事情により,TRIGA炉を設置する調査が33年7月にはじめられた。その後,34年5月に,関東財務局から,横須賀市佐島字松越の原子炉敷地払下げが許可され,同年6月,本原子炉設置の許可が内閣総理大臣から与えられた。建設工事は,35年1月に開始されたが,その途中,イタリアにおいて同型炉のタンクに漏洩が生じたことが報道されたので,36年3月に,炉心プールタンクの設計変更を行なうこととなった。そのため完成は当初予定より遅れ,同年12月8日臨界に達した。さらに,12月19日燃料62本により設計出力100kWに達し,翌年5月性能検査合格証が与えられた。
 同原子炉は,立教大学原子力研究所長によって管理され,所長のもとに利用委員会,安全委員会の両委員会と管理部,研究部,事務部の3部があり,アイソトープの生産,諸種の研究および教育訓練に利用されている。

(3)武蔵工業大学研究炉
 学校法人五島育英会が,川崎市王禅寺に建設中の武蔵工業大学研究炉は,37年5月現在,建屋工事および炉心タンクの据付,X線試験,リーク試験を終了し,遮蔽コンクリート打設が行なわれている。本原子炉は,立教大学研究炉と同型のTRIGA-II型原子炉であって,出力も同じく100kWであり,34年10月設置が許可された。
36年度は,放射性廃棄物処理施設,原子炉本体,核燃料物質の取扱等についての工事方法の認可申請がなされ,いずれも認可された。37年度にはいってからは,4月に原子炉付属施設についての申請が行なわれた。
 本研究炉が臨界に達するのは,37年10月とみられており,完成後には,武蔵工大原子力研究所によって管理されることとなっている。なお,この原子炉の建設費は,東急原子力グループ参加各社の寄付金によってまかなわれており,建設後の経常費は,グループ各社の研究費から支出される。

(4)京都大学研究炉
 全国大学の共同利用原子炉として,京都大学に付置される京都大学研究用原子炉の設置は,35年度に大阪府泉南郡熊取町に敷地が選ばれ,計画が具体化することとなった。
 すなわち,京都大学は,米国のINTERNUCLEAR社と36年8月に第一次契約にはいり,つづいて,9月に内閣総理大臣に対し原子炉設置の承認を求めてきた。原子力委員会では,本原子炉設置に関する総理大臣の諮問を受け,原子炉安全専門審査会において,その安全性について審査を行ない,37年3月,本原子炉が規制法に規定する承認の規準に適合する旨答申した。これにより,内閣総理大臣は,京都大学長に対し,37年3月15日付で本原子炉の設置を正式に承認した。同時に,京都大学と前記米国製造会社との第二次契約が発効し,詳細設計がはじめられた。
 京都大学研究用原子炉は,学術研究用および教育訓練用の水泳プール型原子炉であって,その概要は下記のとおりである。
  型   式    水泳プール系タンク型,炉心固定式
  熱 出 力    1,000kW
  平均熱中性子束  7〜8×1012n/cm2 sec
  燃   料    90%濃縮ウラン
  冷   却    軽水強制循環
 この原子炉は,他の同種の原子炉が持つと同程度の負の温度係数および負のボイド係数が期待され,2%以下の反応度が誤って加えられても,本質的に固有の安全性を持つものと考えられている。炉心タンクは厚さ1cmのアルミ板で作られ,直径2m,深さ8.2mの円筒形をなし,炉心は炉心タンクの底部に固定される。上部には遮蔽体をかねたふたを有する。炉心,部は,MTR型燃料要素の集合によって作られる。制御棒は粗制御棒4本,微調整棒1本からなる。炉心部の冷却は,熱出力100kW以上の運転にさいして強制循還が行なわれる。また,この原子炉には,放射孔,照射孔,貫通孔等多くの設備が備えられる。この原子炉本体は,この型式の他の原子炉と大同小異であって,安全性の観点からとくに問題はないと考えられる。
 なお,本原子炉の建設費は,敷地購入費を含めて約26億円が要求されており,35年度から文部省に分割して予算が計上されている。建設期間は約,27ヵ月で,39年3月に完成する予定である。


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