第2章 機構,法制および予算

§1 機 構

 原子力委員会は,原子力基本法第4条に示されているように「原子力の研究,開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し,原子力行政の民主的運営を図るため」昭和31年に設置され,この目的を達成ずるに必要な権限を与えられている。したがって,放射能の調査分析,あるいは放射能対策の研究等は,たとえこれが外国の核爆発実験に起因するものであっても,わが国の原子力利用に関連するものとして,原子力委員会が所掌してきたのである。
 ところで,36年9月ソ連の核爆発実験再開以来,放射能問題がクローズアップされるにいたり,政府は,36年10月とりあえず,内閣に放射能対策本部を設置し諸般の対策を講じたが,放射性降下物は,今後長期にわたって影響を及ぼすと考えられるので臨時的組織でなく,恒久的組織においてこれに対処していくことが要請されるにいたった。
 国会においてもこのような観点から,放射能対策に関する総合的な責任体制は,原子力委員会を中心として確立すべき旨の衆議院科学技術振興対策特別委員会の決議が衆議院によって採決された。
 この決議の趣旨にものっとり,原子力委員会を中心として放射能対策に関する責任体制を確立するため,原子力委員会設置法の一部を改正して,従来から所掌してきた放射能調査分析,対策研究等に加えて,「放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関すること」をも併せて原子力委員会が所掌する旨を明らかにすることとなった。
 この「原子力委員会設置法の一部を改正する法律」は,37年4月28日公布施行された。
 原子炉の安全審査に関しては,従来,各界の権威で構成される原子炉安全審査専門部会により行なわれてきたが,安全審査の重要性にかんがみ,36年4月,原子力委員会設置法を改正して,原子力委員会の下部組織として,原子炉の安全審査を行なう常設的組織である原子炉安全専門審査会を設置することになった。審査会の定数は30名であり,36年8月から発足し,従来の原子炉安全審査専門部会は同年8月解散した。また,このほか,金属材料専門部会は36年10月,金属材料開発に関する研究計画を取りまとめ,原子力委員会に報告し,11月に解散した。なお,原子力委員会の専門委員の定数は,原子力委員会設置法施行令の一部改正により,10名減少して140名になった。
 原子力行政の実施機関である原子力局は,従来から放射能の調査,分析,対策研究等に関する事項を原子力平和利用の一環として取り扱ってきているが,新たに,上記原子力委員会設置法の一部改正によって,「放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関すること」が,原子力委員会の所掌に加えられたのに対応して,「放射性降下物による障害防止に関し関係行政機関が講ずる対策の総合調整を行なうこと」が原子力局の所掌となった。この改正に伴い放射能対策に関する原子力局の機能を強化するため37年4月新たに放射能課が設けられた。また,原子力局の人員を,6名増加して149名とした。
 一方,最近,原子力開発の新しい分野として放射線化学が将来の化学工業の技術革新に大きな影響を与えるものとして多大の期待が寄せられ,36年2月発表された原子力開発利用長期計画においても「放射線化学の開発を促進することは,新技術の開発,産業の発展等に貢献する」とされているので,これにそうべく,原子力研究所に放射線化学中央研究所が設けられることになった。
 これに伴い,原子力研究所法の一部を改正して理事の定数を1名増加して7名とし,この増員される理事を放射線化学中央研究所の所長にあて,この分野における業務の円滑な運営と機能の充実を図ることとなった。
 この改正法律ば,37年3月公布され同年4月施行された。


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