第1章 総論
§2 国内の動き

2−4 長期計画の推進

 36年2月に原子力委員会により決定された「原子力開発利用長期計画」は,前述の放射線化学中央研究所設置によって,その具体化の第一歩を踏み出したが,36年度には,そのほかの多くの問題について原子力委員会の各専門部会においてその具体化の検討が進められた。
 このうち,原子力第1船の建造,材料工学試験炉の設置および再処理工場の建設という3つの大きな計画については,それぞれ原子力委員会の専門部会において,各建設計画に対する具体的な構想が検討され,いずれも原子力委員会に報告された。これら諸計画の実現には,数年にわたる期間と,巨額の資金を要するが,将来是非とも実現されなければならない問題である。
 また,原子力発電の長期見とおしとして考えている45年までの前期10年における開発規模電気出力約100万kWの具体化については,最近の電力需要の急増にともなう電源開発資金の調達難等から,その実現をめぐって多くの議論が行なわれた。特に,従来から受注の伸び悩みと多額の研究投資の圧迫に苦しんできた原子力産業界としては,原子力産業育成の見地からも,この政府の積極的な振興策を強く要望している。
 こうした問題は,帰するところいわゆるエネルギー総合政策における原子力発電の位置づけの問題であって,この点,エネルギー供給源の多様化による供給安定の観点から,長期的エネルギー総合政策の一環として原子力発電の推進をはかるべき時である。


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