第9章 核燃料
§2 わが国の開発状況

2−1 探 鉱

 わが国のウランの探鉱は主として工業技術院地質調査所および燃料公社で行なわれている.地質調査所では,31年度からウラン鉱賦存の可能性のある地域約20万平方キロメートル(日本の面積の約半分)を対象としてエヤーボーン,カーボーン調査等を行ない,35年までに(第2図)に示す地域約12万平方キロメートルについて探鉱を実施した。

 地質調査所では,35年度にこのウラン探鉱のため,事務職員42人,兼務職員25人計67人をあてて予算約4億2,000万円をもって,組織的に堆積岩地域面積約2万1,600平方キロメートルについて概査を行なうとともにウラン鉱床の地質鉱物学的研究を進めた.その結果,現在までに,山形県砂川地区,新潟県,山形県境金丸―小国地区,京都府宮津地区などで,あいついで堆積岩中に放射能が発見され,,とくに,金丸―小国地区では,かなり広範囲に含ウラン堆積岩の露頭およびウラン鉱物が発見され期待されている。
 一方,燃料公社は探鉱関係職員167人,予算約1億3,200万円で地質調査所の基礎的概査のあとを受け開発に直結する精査を行なっている.35年度は人形峠およびその周辺地区に重点をおいて調査を実施した。
 人形峠鉱山および東郷鉱山は,いずれも堆積型鉱床に属し,基ばんの花崗岩の凹所に富鉱部が存在する可能性の高いことが,探鉱の進展により判明した。
 この含ウラン堆積岩は,人形峠を中心とし,その東方および北方に広範囲にわたって分布している.人形峠およびその東方地域については峠,夜次,中津河,倉見,黒岩の各地区でその賦存が確認され,人形峠鉱山として探鉱が進められている.また,人形峠の北方地域については,神ノ倉,鉛山,三徳,方面,麻畑等の各地区でその賦存が確認され,東郷鉱山として,探鉱が進められている。

 また,新潟,山形県境の小国地区は,34年晩秋の発見に引きつづき,35弁6月に小国駐在員事務所を新設し,直ちに鉱床の延長特性を解明するため試錐を含む地質調査を開始した.この結果,第三紀層の砂岩れき岩は花崗岩の斜面上に分布し,この中の一部に,ウラン鉱床の存在が確認された。
 その他新潟県,三川,赤谷地域では35年1月の発見以来地質調査所と共同で,地表調査試錐探鉱,ユースコープ調査を実施し,周辺の含ウラン層の分布範囲,ウラン鉱物の産状等を明らかにしつつあり,京都府宮津地区では34年度に引きつづきトレンチを含む鉱床精査および試錐探鉱を実施し,鉱床の実体を把握すべく探鉱を進めている。
 人形峠鉱山,東郷鉱山およびその周辺のウラン鉱量はいまのところおおむね平均品位0.07%(U308)として,(第9-7表)に示すとおり,約242万トンと推定されている.その鉱石が製錬しやすい特性をもつものであることからみて,わが国におけるウラン資源として最も有望なものである。

(この鉱量計算はU308として0.01%以上のウランを含む鉱石を対象として計算されたもので,各欄の品位はそれらの平均値である.)
 地質調査所および燃料公社のこれまでに探鉱に要した経費はそれぞれ原子燃料公社探鉱実績表(付録4-2)および地質調査所年度別経費作業量一覧図(付録4-4)のとおりである,
 通商産業省は民間企業に対して31年度以来核原料物質開発促進臨時措置法(31.5.4)にもとづき,探鉱補助金を交付して,奨励促進している。
 35年度までに延べ76鉱山にたいし,約1億2,000万円を交付し,坑道探鉱延べ1万7,000メートル,試錐探鉱延べ約7,000メートル,地質調査延べ18件,および放射能測定器具58台の整備に対して補助が行なわれた.35年度には約1,500万円を11鉱山へ交付した.補助金交付実績は(第9-8表)のとおりで,漸減の傾向にある.その成果も,補助事業の対象鉱山で,局部的には,高品位ウラン鉱が発見されているものもあるが,概して鉱床の規模,品位とも思わしくない.稼行鉱種の副産物として考慮の対象になるにすぎない。


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