第8章 核融合

§1 海外における開発状況

 熱核反応により核融合反応を起す研究は,米,英,ソをはじめ多くの国において行なわれており,大規模な熱核反応実験装置も数多く建設されているが,核融合反応を達成するに必要な諸問題を解決するには至っていない開発の初期には大型実験装置の建設が競って行なわれたが,米国のステラレータ,英国のZETAなどにおいて種々な問題が提起されたため,最近ではプラズマ物理等の基礎理論の解決に多くの努力が向けられるようになってきた。この傾向は昭和36年9月オーストリヤのザルツブルグで開かれる「プラズマ物理および制御核融合シンポジウム」の議題が理論的なものを中心として取上げていることからもうかがえる。このよに情勢は変ってきたが,研究開発は着実に進められている。
 米国においては,プリンストン大学においてステラレータ型装置の開発を行なっており,36年中にその改良型であるC型を完成し現在最も有望とみられているイオンサイクロトロン加熱方式を用いて熱効率を上げようとしている。注目に値いするものとしてはローレンス放射線研究所のTO Y,TOP-IIIの実験結果が上げられよう。これは2重水素と3重水素の理想的反応温度(5,000ev)の約半分の2,800evに到達したものである。
 この外,オークリツジ国立研突所ではDCX装置を,ロスアラモス科学研究所ではシラー装置の開発を行なっている。
 英国では環状ピンチ方式によるZETA装置の開発を行なっており,ソ連でも同じ方式によるALPHA装置を有している。
 ドイツではゲッチンゲングループによる理論研究の外,マックスプランク研究所およびアーヘン研究所において測定を主とした実験研究が行なわれている。

 フランスではフォンテイヌ研究所およびサクレー研究所でプラズマの研究が行なわれており,イタリアはCERNと共同研究でプラズマ閉じ込めの研究を行なっている。この外ベルギー,オランダでも研究を行なってる。
 米国,英国,西欧における熱核反応研究状況を要約すると(第8-1表)のようになる。


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