第7章 原子力船
§2 わが国の開発状況

2−2 研究開発の状況

 わが国における原子力船開発研究は昭和32年運輸技術研究所で原子炉の船舶推進への適応性について研究が行なわれたのにはじまる。同所ではひきつづき,原子力船に固有な狭い限られたスペース内の効果的遮蔽の研究,原子炉に要求される高い信頼性を保っため振動下における原子炉関連機器の試験研究,外洋における波浪等の外力下における作動の信頼性の研究などとともに,将来の原子力船と見られる超高速船あるいは潜水船の研究も行なわれている。
 民間では,いくつかかのグループが原子力船の試設計を発表しており,実験研究も平行して行なわれている。33年には舶用炉の制御に関する研究,耐衝突構造の研究が行なわれ,34年度からは新たに発足した原子力船研究協会において,原子炉周辺の船体構造に関する研究,外力の舶用炉に及ぼす影響の研究などが行なわれた。これら運輸技術研究所および民間において政府の補助金,委託費を受けて行なった研究題目等は原子力船関係。政府支出研究費一覧表(付録2-3)に示すとおりである。
 35年度における研究内容について述べると運輸技術研究所では「原子力船の振動および動揺対策の研究」として,34年度に建設した大型振動動揺試験機により原子炉プラント機器の振動実験を行なうとともに,沸騰水炉の動揺下のボイド分布について実験を行ない,「原子力船の遮蔽に関する研究」として,遮蔽材の強度試験を行なった。また水槽試験関係では「原子力船の波浪中における運動性能の研究」として,とくに動揺防止対策,プロペラの負荷変動の研究を行ない,「潜水船の推進および安定性能に関する研究」として,とくに水中安定性能に関する研究を行なった。
 一方民間では「船用原子炉炉心における伝熱および流動特性の解析に関する研究」として,ステンレス被覆の模擬電熱燃料棒を用いたテストセクションにより,動揺時等におけるボイド分布の変動による出力振動の安定性に関する実験が行なわれ「原子炉周辺の船体構造に関する研究」では格納容器と船体構造の一体化,座礁にたいして有効な二重底構造,高張力鋼の耐衝撃性の研究が行なわれた。「外力の原子炉におよぼす影響の研究」では34年度にひきつづき,高速貨物船,大型タンカーによる振動,動揺,スラミング等の外力による加速度の計測を行なった。一方「原子炉遮蔽計算コードの研究」では,遮蔽体中のγ線束分布,中性子束分布,捕獲r線分布,発生熱,温度上昇,熱応力の分布についてコード化を行なった。


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