第6章 原子力発電
§2 わが国の原子力発電

2−1 原子力発電計画

 わが国の原子力発電計画は当初原子力委員会がさきに策定した「原子力開発のための長期計画」(31年9月)および「原子力発電開発のための長期計画」(32年12月)により推進された。この計画は昭和50年までに約700万kWの原子力発電所の建設を目標としていた。この長期計画にそって日本原子力発電(株)のコールダーホール改良型原子力発電設備の導入が行なわれ,現在39年に完成を目指して建設中である。
 しかし原子力をめぐる世界情勢の変化により。原子力委員会では新たに「原子力開発利用長期計画」を,36年2月8日に発表した。この計画ではわが国原子力発電の発展はおおよそ次のように描かれている。
 原子力発電コストは45年頃には火力発電コストと匹敵するようになると予想して,36年度から45年度までを前期,46年度から55年度までを後期としている。しかして所得倍増計画によれば,前期約3,600万kW,後期約4,800万kWの発電設備の増加を必要とするので原子力発電としては,前期約100万kW,後期600〜850万kWの発電所の建設が見込まれている。45年および55年における各発電設備の割合は(第6-1図)のようになる。
 前期は後期に備えての準備期とし,発電技術の開発と経験の蓄積を主眼とする。すなわち,前期においては,わが国の技術の現状からみて,個々の機器については製作可能のものも少なくないが,発電所全体としての機能を完成させ,その安全性を確保するためには,発電所全体としての設計製作,建設の技術の開発と経験の蓄積を必要とする。この意味から前期100万kW程度の原子力発電所を建設するのが妥当である。したがって前期に建設される原子力発電所の設備は主として海外技術の導入によって製作される。また採用される原子炉にしても海外で完成され,運転実績のある軽水冷却型およびガス冷却型を予想している。

 後期においては,前期における技術の開発と経験の蓄積とにより,発電設備の大部分を国産によってまかなえることを期待し,また,その建設規模については同期間に建設される火力発電の30%程度を適当と考え,600〜800万kWと予想した。採用される原子炉も,前期同様軽水冷却型およびガス冷却型が有力と考えられており,これに今後の技術開発により有機剤冷却型等新たな型の動力炉の取り入れも可能とされている。
 原子力発電所の建設は民間会社に期待し,政府としては,金融,税制その他において適切な措置をとり,原子力発電所の建設を推進することとしている。
 以上は長期計画の大要であるが,原子力発電所建設では,日本原子力発電(株)が,現在の東海発電所の建設にひきつづき本州西部地区に米国型の原子力発電所建設の検討を開始することを36年2月に決定した。また,その他の電力事業者も将来に備えて,技術者の養成,経験の蓄積等の必要性も勘案して,原子力発電所の建設を考慮している。


目次へ          第6章 第2節(2)へ