第5章 原子炉

§4 原子力研究所の臨界実験装置

(1) 半均質臨界実験装置
 半均質炉の構想は33年頃から,(1)高温運転が可能なこと,(2)再処理が容易なこと(3)燃料の利用効率が高いこと,などを主目的として,考えられた.まず炉物理的研究を行なうため,33年末から臨界集合体の設置が計画され,34年より建設を開始し,34年6月に完成した.その後,機器の調整等を行ない,燃料の装荷は36年1月19日から開始された.9回にわたる燃料装填と中性子倍率測定の後,1月25日345本の燃料棒の装填を終え,6角柱の燃料集合体を密着し,制御棒を抜いたところ臨界に達した.この時の235Uの量は,最も臨界に達しやすいような条件を選んだので少なく,3.5kgであった。
 この臨界実験装置では,種々の燃料組成における臨界量,反射体の効果炉心形状の効果などが測定されるほか,制御棒の効果,中性子分布,出力分布,反応度の温度系数などの測定が行なわれ,さらに,中性子エネルギー分布の特性などの測定が行なわれる.この装置は,今後,原子炉の核的シミュレータおよび原子炉物理の実験装置としての役割を果すであろう。
 なお,機械および核計測の製作は日本原子力事業(株)がまとめ,燃料の加工は三菱原子力工業(株)が行なった.核計測の面では,国産の核計測装置で原子炉を実際に操作するのはこれが最初であって実用になるよう仕上げることができたことの意義は大きい。

(2) 水均質臨界実験装置
 水均質臨界実験装置は34年度に建設を完了し,35年度に,酸化トリウム・スラリーを用いて臨界予備実験が行なわれた。臨界試験は36年6月に開始された。
 臨界予備実験については,まず,35年6月に重水ブランケット系の軽水による試験を終え,2,3の改造を行なった。次いで酸化トリウム・スラリーのブランケット系の懸濁試験および沈降試験を行なった。これにより,酸化トリウム・スラリーのブランケット内におげる懸濁の均一性とその時間変化が解った。例えば循環機停止後の沈積速度は酸化トリウム濃度300grllで約2 cm/secであった。また,懸念されていたスラリーの沈降による系の閉塞と沈降した酸化トリウムの再分散についてはいずれも問題とならなかったが,循環機の能力が不足であることが解るなど,ブランケット系の改造点がかなり明らかになった。
 36年度以降は臨界量,質量係数,温度係数,中性子束分布,中性子エネルギー分布および転換比等についての研究が進められる予定である。

(3) 高速中性子炉ブランケット指数実験装置
 高速中性子増殖炉の開発を目標とするブランケット指数実験装置は33年度に完成し,高速中性子源用濃縮ウラン板は36年5月に,原子力研究所に到着した。35年度には,実験準備として,JRR-1炉室に設置するためのコンクリート遮蔽ブロック,コンバーター(高速中性子源)操作機構等の設計が行なわれ発注された。また,実験計画の検討が行なわれた。
 一方,高速中性子系臨界実験装置のための予備設計として,20%濃縮ウランでの高速中性子炉臨界質量の計算等が行なわれた。


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