第5章 原子炉

§1 概 況

 32年8月,JRR-1によりわが国最初の原子の火がともされて以来,約4年になる.この間原子炉の研究開発は急速に進展し,原子炉一覧表(付録3-1)に見られるごとく35年度末現在,運転中の原子炉は2基,建設中のものは8基で計画中の3基を含めると計13基となっている。
 まず,研究用原子炉についてみると,原子力研究所では,基礎研究および人員の訓練を目的とするJRR-1が,臨界に達して以来,順調な運転を続け35年4月には総熱発生量5万kW時に達したので,燃料取出し試験が行なわれ,その後も順調な運転を続けている.基礎研究および材料試験を目的とするJRR-2は,熱交換器の漏洩や燃料問題のために完成が約2年遅れ,35年10月臨界に達し,低出力運転を続けた後,36年3月には,1,000kWへの出力上昇に成功した.国産1号炉であるJRR-3の建設も進み,36年度未には臨界に達しうる見通しである.このほか,原子力研究所には,舶用炉の遮蔽研究を主目的とするJRR-4が36年度予算に計上され,建設に着手することとなり,また,材料試験炉を設置する問題の検討が原子力委員会で開始された。
 大学関係では,立教大学原子炉および武蔵工業大学原子炉の建設が進み,一部設計変更の後,立教大学原子炉は36年未,武蔵工業大学原子炉は37年春に臨界に達する予定である.近畿大学原子炉の建設も順調に進み,36年夏に臨界に達する予定である.この他,敷地問題で難航した関西研究用原子炉の敷地として新しく大阪府熊取町が選ばれた。
 民間企業関係では(株)日立製作所および東京芝浦電気(株)が政府から34および35年度原子力平和利用研究費補助金の交付を受けて,教育訓練を目的とする原子炉を試作することとなり,その建設が進められ,36年末には臨界に達する予定となっている。
 動力用原子炉についてみると,原子力研究所が設置する沸騰水型動力試験炉の購入契約が35年8月締結され,基礎工事が始められた.炉の臨界予定は37年夏となっている.また,コールダーホール改良型原子力発電所*の建設が,34年12月許可され,39年春工事完成を目標として建設が進められ,基礎工事がほぼ完成している。
 この他,原子研究所では,半均質炉の開発のための,半均質臨界実験装置が,36年1月臨界に達し,また,水均質臨界実験装置は36年6月燃料が到着し臨界試験が行なわれている.高速中性子増殖炉の開発をめざすブランケット指数実験装置も,高速中性子源用濃縮ウラン板が36年5月到着し,実験が開始された。
 また,原子力研究所や民間企業では,ガス冷却炉,軽水冷却炉,ナトリウム冷却炉等の熱伝達,関連機器,材料等について研究開発が進められている。


* 第6章原子力発電を参照のこと

 一方,海外に目をむけると,36年未現在運転中および建設中の原子炉は各国の原子炉設置状況(付録3-2)に見られるように,研究用原子炉226基動力用原子炉166基となっている.動力用原子炉についてその内分けをみると,発電用,暖房用等の陸上用動力炉が実験炉を含めて108基,潜水艦用を主体とする艦船用動力炉が49基,航空機およびロケットの推進用およびその補助動力用の飛翔体用動力炉が9基となっている.また,年次別の原子炉完成状況は(5-1図)にみられるとおり,32年頃から活溌となり,35年度は研究用原子炉の伸びはあまりみられなかったが,動力用原子炉は前年度に比してかなりの伸びを示した。


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