第4章 国際協力

§2 双務協定の実施

 現在わが国が原子力利用に関して締結している二国間協定は日米,日英,日加の三協定である。
 このうち最も古いのは日米協定で,まず昭和30年末に研究用原子炉とそれに必要な濃縮ウランの受けいれを内容とするいわゆる研究協定として締結され,これにもとづいてJRR-1燃料用およびJRR-2第一次装荷燃料用の濃縮ウランを賃借するために第一次,第二次の細目協定が結ばれた.この研究協定は33年12月に動力炉とその燃料の受けいれも可能とする現在の協定(いわゆる動力協定)に改められた.そしてこれにもとづいて現在まで第三次から第五次までの細目協定が締結されている。
 (第三次は原研の半均質系臨界実験装置,第四次は水均質臨界実験装置第五次は速中性子増殖炉指数実験装置に使用される濃縮ウランの賃借を目的とするものである.)なお,これらの協定にもとづく濃縮ウランはいずれもすでに米国内での加工を終り日本側へ引渡されている。
 これまでは濃縮ウランの賃借一件ごとに細目協定を1つ締結するやり方をとってきたが,これでは非常に手数がかかる上に協定交渉のため日時を要し,必要な燃料の入手が遅れるおそれもある。一方,民間原子炉の建設も着々と具体化し燃料の入手依頼も出るに至ったので,なんらかの形で包括的な協定を締結することがのぞまれるようになった.このため日米間で交渉が重ねられた結果「日本国政府とアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の特殊核物質賃貸借協定」が締結されることとなり36年5月19日ワシントンで署名が行なわれた。
 この細目協定は,今後米国から濃縮ウランを借りいれるすべての場合に適用される包括的な協定であるというのでブランケット協定などとも略称されている.なお,既存の細目協定のうち第一次および第二次の協定は国会の承認を受けた条約の形式をとっているのでこれはそのまま存続されるが,第三次から第五次までの協定は,ブランケット協定の付属書に吸収されることとなった。
 ブランケット協定発効後は日本は一定の様式の特殊核物質発注書を米国に出し,米国がこれを受諾すれば賃貸借は成立することとなるわけで,今後の濃縮ウランの入手は大いに円滑になるはずである。
 日米原子力協定において,米国は濃縮ウランをすべて政府の所有とし,政府から政府へという形式でなければこれを海外へ出さないという政策をとっているためにこのように多くの細目協定が必要となったわけであるが,天然ウランの場合は,各国ともこのような厳しい管理を行なっていないので今日までのところこれに関する細目協定はない。
 今後の問題としては,国際原子力機関の保障措置に関する規則が正式に採択されたので,これまで二国間協定にもとづいて,提供国が行なってきた保障措置を国際原子力機関による保障措置へ漸次切り替えてゆくことが検討されることとなろう.また最近南阿,アルゼンチン等のウラン生産国からの売込が次第に積極性を帯びつつあるので,これらの,わが国と原子力協定を結んでいない国からの輸入も,保障措置との関連から,今後検討を要する問題となりつつある。


目次へ          第4章 第3節へ