第2章 機構および法制
§2 関係法令の整備

2−2 核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正

 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)は原子力基本法の精神にのっとり,原子炉の設置および運転,核原料物質または核燃料物質の製錬,加工および再処理の事業,その他の核燃料物質の使用等について,平和目的および計画的利用の確保ならびに災害の防止による公共の安全確保を目的として32年6月公布され,同年12月に施行されたものである.しかしながら国内における原子力の研究,開発および利用は,同法の施行当時から着々進展し,また,国際的にも国際原子力機関憲章をはじめ,米英およびカナダとの間に原子力の非軍事的利用に関する協力協定が締結された.これにともない,法律制定当時予想された事態にも変化が生じてきたので,法律施行の経験に徴し現行法の改正により規制の適正化をはかるため,36年2月1日原子炉等規制法の一部を改正する法律案が第38回通常国会に提出され,3月31日に成立,公布された。
 改正の概要は次のとおりである。
(1) 国際規制物資の使用に関する規制
 原子力の平和利用に関する日米,日英,日加各協定および国際原子力機関憲章にもとずいて入手する核燃料物質,原子炉その他の設備,資材すなわち国際規制物資については,平和利用確保の見地から,これら各条約に相手国政府機関の行なう立入検査,報告徴収等のいわゆる保障措置について規定されている。
 これらの条約の実施については,従来は国際規制物資の使用が主として原子燃料公社および日本原子力研究所に限られていた関係上,それぞれ原子燃料公社法および日本原子力研究所法により運営してきたが,原子力の研究,開発の進展にともない,今後広く大学,民間において使用されることが予想されるので国際規制物資の使用について立入検査,記録,報告,移転の制限,条約が廃棄された場合等における国際規制物資の返還命令等に関し必要な規定を設けた。
(2) 臨界実験装置に関する規制
 臨界実験装置については,従来,核燃料物質の使用についての規制措置を適用してきたが,今後,その設置数の増加および規模の大型化が予想されるので,諸外国の事例をも参考として,設置許可,設計および工事方法の認可,施設および性能検査,保安規定,主任技術者の選任等に関し原子炉に準ずる規制を行なうこととした。
(3) 原子炉施設の定期検査
 原子炉施設の検査については,現行法上,その設置および変更時における施設検査,性能検査の規定があり,また,その他必要な場合には随時立入検査を行なうことができるのであるが,原子炉災害の防止についてとくに万全を期するために,原子炉施設のうち,その安全性に関し,重要な部分について毎年1回,定期検査をうけなければならないものとした。
(4) 核燃料物質の使用に関する規制の強化
 核燃料物質のうち,プルトニウムおよび使用済燃料は,他の一般の核燃料物質と異なり,放射能が強く,かつ,毒性を有する等の危険性からみて,施設および取扱いの面において万全を期する必要がある.このため一定量以上のプルトニウムおよび使用済燃料の使用について,従来の核燃料物質の使用についての規制に加えて,施設検査,保安規定に関する規定を設ける等により規制の強化をはかった。
(5) 原子力施設検査官
 原子炉施設等の施設検査,性能検査および定期検査に関する職務は,一般行政事務と異なり,原子力に関する高度の知識と経験とを必要とするものであるから,一定の資格を有する者にこの職務を行なわせることにより,国の行なう監督に万全を期する必要がある.このため,科学技術庁に原子力施設検査官を置き,この法律に規定する検査に関する事務に従事させるものとした。


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