第2章 機構および法制

§1 機構の整備

 原子力委員会は,原子力の研究,開発および利用に関する国の施策を計画的に遂行し,原子力行政の民主的運営を図るため,昭和31年に設置されたが,設置後すでに5年余り経過し,その間にわが国の原子力研究開発利用は原子炉のみならず,核燃料,アイソトープ等の各方面において著しい発展を示している。
 このような情勢に応じて原子力利用について企画,審議,決定を行なう原子力委員会の所掌する事務も増大し,かつ,重要の度を加えてきたので,35年4月「原子力委員会設置法の一部を改正する法律」により原子力委員会の委員をさらに2名増員して,その機能を強化し,かつ充実させることとなり,新たに西村熊雄および駒形作次が36年3月に原子力委員に就任した。
 原子力委員会の参与会は従来にひきつづいて毎月1回開催されて原子力委員会に助言を与えており,また専門部会は従来設置されていたものに加えて,35年度中には放射線化学,材料試験炉,長期計画,原子力災害補償(33年10月に設置された原子力災害補償専門部会は35年5月に解散したが,その後次第に活発化してきた原子力災害補償制度の国際的統一化の問題および前回一応除外された諸問題について検討するため35年10月に設置されたもの)および廃棄物処理の5専門部会が新たに設置され,原子力船,核融合,動力炉調査,原子力災害補償(33年10月に設置されたもの),原子力関係科学者技術者養成訓練および長期計画の6専門部会は35年度中にそれぞれ諮問事項について答申を行なって解散した。36年6月末現在で活動中の専門部会およびそれに対する諮問事項は原子力委員会専門部会一覧表(付録1-3)の通りである。
 なお,原子炉の安全審査に関しては,従来,各界の権威で構成される原子炉安全審査専門部会を設け,原子炉の安全性確保に遺憾なきを期してきた。しかしながら,この専門部会は本来常設的なものではなく,35年4月の原子力委員会設置法の一部改正に際しても衆議院科学技術振興対策特別委員会および参議院内閣委員会において「原子炉安全審査機関を法制化すべきである」旨の附帯決議がなされ,また原子炉の安全性確保の重要性にかんがみ36年4月「原子力委員会設置法の一部を改正する法律」により,原子炉の安全審査を行なう常設機関として原子炉安全専門審査会を設置した。審査会は原子力委員長の指示があった場合に,原子炉の安全性に関すする事項につき調査審議するもので,学識経験者および関係行政機関の職員のうちから内閣総理大臣が任命する審査委員30名以内で組織されることとなっている。
 原子力委員会の庶務は原子力行政の実施機関としての原子力局が,かねておこなうこととなっているが,原子力開発の発展につれて増大するその事務量に備えて,原子力局の人員は35年度には,前年度の116人から133人に増加し,さらに36年度には143人に増加することとなっている。


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