第15章 科学技術者
§4 国内養成機関の状況

4−1原子力研究所

 原子力研究所が原子力研究の中心機関であるとともに,養成機関としての使命をもっていることは,学術の中心機関,専門教育機関としての大学の二面性と類似している。原子炉研修所とラジオアイソトープ研修所は,養成機関としての使命を果たすためのものである。
 原子炉研修所は,34年4月に第1回の高級課程研修(人員15人)を始め,その後35年4月から36年3月の間に第2回の研修生(6人)を受け入れ,現在第3回(9人)の研修を行なっている。高級課程は,大学の理工学系を卒業後5年以上の研究の経験をもった技術者を対象とした,いわば原子力への転換教育である。期間は1年で,最初の3カ月で160単位(1単位80分)の講義,JRR-1の運転実習,利用実験を行なった後,専門のテーマ研究にはいる。この課程の研修生は,原子力工学科の教官や,研究機関および原子力産業の中堅となる者で,原子力に関する高度の知識技術を修得する。35年3月に開始された一般課程は,期間は6ヵ月で,前半の3ヵ月に,高級課程とほぼ同じ内容の講義をうけ,前期実験をすませた後に後期実験を行なう。後期実験は,JRR-1,モックアップ試験室,冶金特別研究室等で10テーマについて実験する。
 高級課程,一般課程の応募状況をみると,おのおの定員16人にたいして,かなり多数の人が応募しており,約2人に3人の競争率である。所属機関別では民間企業がだいたい3分の2を占め,次に,大学,官庁の順になっている。両課程の修了者はすでに56人にのぼっている。その状況を(第15-3表)に示す。
 上述の両課程とは別に,JRR-1を利用したJRR-1短期運転実習訓練課程がある。これはJRR-1についての講義,運転およびそれを利用する簡単な実験を通して,原子炉のアウトラインを理解させるもので,期間は9日間である。35年度には,第11回から第13回までの訓練を行ない。46人の講習生を送りだした。第1回(33年9月)からの延人数は191人である。

 ラジオアイソトープ研修所は,わが国の原子力関係研修所としては一番古く,その成果は高く評価されている。35年度は,外国からの研修生17人を含めて220人の研修生を送りだした。33年1月以来,36年3月までの研修生の総数は,計23回728人(うち外人71人)におよんでいる。この研修所は,アイソトープの概念,扱い方,測定法あるいは処理法などの基礎を習得するための研修所である。大学卒程度の知識をもつものを対象としており,定員は32人で期間は4週間である,この研修所の特色の一つは,外国からの研修生が多いことである。第1回から第23回までイタリア,東南アジア14ヵ国から71人の研修生があったことは注目に値する。これらの人々はユネスコ関係と国際原子力機関の留学生であり,講義は英語で行なわれている。
 35年度の特色としては,高級課程の開設があげられる。これは,独立研究者あるいは指導的な役割を果しうるアイソトープに関する専門科学技術者を養成するためのもので,35年秋から同所の設備を拡充していたが,36年1月増築の完成を待って,1月23日から3月18日まで,第1回が行なわれた。これは,同研修所の基礎課程終了程度の知識技術をもつ者を対象として工学系,化学系,生物系に8週間の研修を行なうものである。(第15-4表)として基礎課程と高級課程の研修実績を掲げる。


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