第14章 規制と放射線防護
§4 検 査

4−2 アイソトープ等の取扱事業所の検査

 アイソトープ,粒子加速器等の取扱事業所の総数は867(3月末現在)を数えるが,その地域的な分布をみた場合,東京都およびその周辺に比較的多く集中しており,かつ,それら事業所の活動内容から見ても検査の必要性の高いものが多い。ために検査に機動性を持たせるために要求中の放射能測定車が35年度予算として正式に計上され,(総額328万4,000円)同年10月に完成,検査に成果をもたらしている。また一方同車は事故の発生に際しては緊急に出動し,汚染状況を把握して障害防止対策の確立に貢献する機能を持ち合わせている。その諸性能の大要は次のとおりである。
 車体 小型貨物自動車を再設計したもの(乗車定員5名)搭載機器
(a) 測定装置
 (イ) 4πガスフローカウンタ
   検出感度液体試料(r線) 1×10-8μc/cc
      ダスト試料(α線) 5×10-12μc/cc
        〃  (β.γ線) 1×10-10μc/cc
 (ロ) 計数装置
    1,000進法計数装置
(b) 液体試料調整装置
   500CCの液体試料を約1時間半で50CCに濃縮可能
(c) ダストサンプラ
  集じん効率 0.3u以上の粒子につき97%以上検査を実施するにあたって対象となる事項は3つに大別される,即ち手続的事項は,許可を受けまたは届出をした事業所は放射線取扱主任者を選任して科学技術庁長官に届けいで,また,障害予防規定を作成して同長官に提出しなければならないのでこの手続の有無を確めるものである。
 施設基準は,許可申請の際または届出受理後提出された図面にもとづき行なった審査を事業所の業務開始後に現地で検証するものである。
 取扱基準は,日常の取扱方法が法令の取扱基準に合致しているか否か,障害予防規定は遵守されているか否か等を検査するとともに,必要に応じて排水の濃度検査,室内の汚染度検査等の実際の測定を行なう。
 その他各種測定および健康管理の記録ならびに使用,保管,廃棄等の記帳を閲覧し,当該事業所における火災等の危険時対策の是非を検討する。
 検査は取扱事業所において取扱われている機器の種類(フアンデグラフとかサイクロトロン)やアイソトープの核種,量,取扱い方法等を考慮してその頻度が定められるが,定期検査としては最高は1年に1度,最低のもので4年に1度,その中間としておのおの2年,3年に1度と4段階になっている。35年度の検査実施件数は165件であったが,それら検査の結果は,使用停止等の行政処分を受けた者は,皆無であった。しかし一部には法令についての解釈,記録,記帳の内容や方法等につき不十分な点があり,これらにつき注意,指導が与えられた。


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