第14章 規制と放射線防護
§4 検査

4−1 原子炉の検査

 原子炉の設置が許可された場合,工事に着手する以前に,原子炉設置者は原子炉施設の設計と工事方法について監督官庁の認可を受けなければならないが工事に着手した後でも,その工程に応じて施設検査および性能検査を受け,その検査に合格しなければ原子炉を運転することはできない。
 35年度においては,JRR-2,JRR-3,立教大学原子炉,武蔵工業大学原子炉,(株)日立製作所原子炉,東京芝浦電気(株)原子炉の建設工事が行なわれ,それぞれにつき施設検査を実施したが問題はなかった。なお,JRR-2については性能検査もこの間に行なわれている。
 JRR-2関係の設計および工事方法の認可は34年11月までに全部終了し,同炉は35年10月臨界に達した。それ以来36年2月末までに担当官立会いのもとに,(I)制御棒の制御効果,(II)燃料要素の反応度(III)上部重水反射体の影響(IV)実験孔の(等価)反応度(V)中性子束分布および出力計較正(低出力範囲)(VI)温度の反応度係数を低出力時における特性試験として実施した。
 その結果,原子炉の安全運転に重要な関係を持つ制御棒の制御効果は,当初想定した値を大巾に上回ることが明らかとなった。
 また3月初旬以来出来力上昇試験を実施し,3月22日,目標1,000kWにはじめて到達したが,ここでの最も大きな問題は,燃料要素のX線写真により,燃料要素のウランアルミ合金中にウランまたはウランカーバイトと思われる高密度の小さな不均質個所が存在することが,推定されたことである。原子力局および原子力研究所では,この不均質個所により,燃料要素の被覆が破損し,問題となるほどの核分裂生成物が重水中またはヘリウム中に放出するかどうかについて検討した結果,1,000kW程度の出力運転は十分安全に行ないうるという結論に達した。しかし,さらに慎重を期するため,破損燃料検出を目的とした高感度の各種測定装置を重水系およびヘリウム系に増設し,また,米国アルゴンヌ国立研究所においてCP-5型原子炉の設計,建設,および運転等に十分な経験を有するハーバート・チャールス・スチブンス氏を出力上昇試験のコンサルタントとして招へいし,その助言を求め,しかる後に上昇試験を行なった。
 出力上昇試験は,今回の出力上昇目標である1,000kWをいくつかの出力段階に分け,各出力段階を約1週間で実施するという方針をたて,3月6日から開始した。前記のごとく,3月22日JRR-2の出力は1,1000kWに到達し,この出力で約1時間の運転を行なったが,原子力局では,出力上昇試験のはじめより常時担当官を試験に立合わせた。
 出力上昇運転中の試験は,破損燃料検出に関連をもつ(I)周辺の放射線レベルの測定(II)重水系およびヘリウム系モニタの常時監視(III)重水中のウランの微量分析(IV)出力計の較正(高出力範囲)の各項目について,主として注意が払われたが,その結果については特に問題とすべきものは認められなかった。
 なお,最終的な1,000kWの連続運転試験は4月下旬に実施され,安全上支障ないことが確認されたので,6月下旬保安規定の認可と同時に1,000kWの性能検査合格証が原子力研究所に交付された。


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